なぜ?早見優、岡田有希子ら昭和アイドルの『B面曲』が海外でヒット… “J-POPにハマって移住”のギタリストが魅力を分析
ケース2:河合奈保子「夏の日の恋」
‘84年6月発売のシングル「コントロール」のB面。A面、B面ともにシンガーソングライター・八神純子による作曲で、A面は当時、飛ぶ鳥を落とす勢いでヒット曲を手がけていた売野雅勇が作詞を担当。これに対し、B面「夏の日の恋」は、三浦徳子が作詞した八神純子のシングル「Mr.ブルー ~私の地球~」のB面に収録されていた楽曲をカバー。編曲は「コントロール」を鷺巣詩郎、「夏の日の恋」を大村雅朗がそれぞれ担当。当時、オリコン最高7位、累計15.0万枚のセールスだった。
‘24年7月末時点のSpotifyでの累計再生回数は、「コントロール」が8.4万回に対し、「夏の日の恋」が11.4万回と、こちらもB面曲がリードしている。
「『夏の日の恋』は、正直言ってヒットの要素が見当たらなかったんです。イントロは、A面の『コントロール』のようにキャッチーじゃないし、ボーカルの出だしの部分も伴奏音が大きくて、とっても歌いづらい。これは、歌謡曲というよりも、フュージョン(ジャズを基調にロック、ラテン、クラシックなどを融合させた音楽のジャンル。’60~’70年代初頭に発生)の要素が強いですね。アルバムの1曲という感じです」
さすが、プロデューサーでもあるマーティ! 実際、この「夏の日の恋」は、同時発売だったアルバム『サマー・デリカシー』に収録された1曲だったので、当時からアルバムの雰囲気を紹介するためにシングル・カットされた可能性も大いにあるだろう。
「本来、ヒット曲は口ずさみやすいものを目指すべきで、次にどんなメロディーになるか予想ができるものがわりと多い。でも、この『夏の日の恋』のメロディーはやや複雑で、プログレ(プログレッシブ・ロック。進歩的・革新的なロックを意味する)的な要素も感じます。つまり、河合奈保子さんはかなり歌いづらい楽曲を歌えているのですが、それよりも、メロディーの難しさや、ミュージシャンの演奏力のすごさが目立っている。特に、この曲は、ラストのフェイドアウトまで、とても長いギターソロがあるじゃん! アメリカでは、爽やかなポップスの中でギターソロの演奏は絶対にないのですが、日本はギターソロやストリングスを入れたりするのが大好きですよね。僕はギタリストとして、日本は“天国”だと思っています!」
ちなみに河合奈保子は、今回紹介する5人の中ではリスナーの海外比率がさほど高くない。また、雑誌『昭和40年男』(ヘリテージ刊)とWebサイト『Re:minder』が実施した『80年代アイドル総選挙』という企画でも、総合では5位の河合奈保子が19才以下の順位に限ると2位、20代では3位になっていたことも考慮すると、当時を知らなかった日本の若い世代にも人気が広がっていることが推測される。
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