夕方ニュースが「年金生活の苦境」企画を連発 背景にある2つの事情と“テレビの老い”

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昨年末には「特番」も放送していた

 連日放送したことからもわかるとおり、シニアに向けた特集は「イット!」の人気企画のようだ。昨年末には「しらべてみたら」のスペシャル版を放送していたのだが、今もフジテレビのHPに残る告知のネット記事には、次のようにある。

《これまで放送してきた中でも人気のシリーズ“年金の現実”が、さらにパワーアップ!世の中にあまたある職業で働く人々の年金額を徹底取材する。今年も、芸能人たちの気になる年金額もしらべるべく、まずは今年で結婚51年となる林家ペー&パー子夫妻のもとへ…(後略)》

 またチーフプロデューサー・山口吉博氏の《「人気シリーズ“年金の現実”では、普段ではなかなか聞けない年金額について、様々な職業の方から、去年に続いて芸能人の方々にも伺いました。いまや国民の3人に1人が年金を受け取るなか、物価の上昇など生活に影響が出る中で皆さんの本音をしらべました」》というコメントもからも、制作側もこのシリーズに力を入れていることがうかがえる。

他局も「年金」企画…そのワケは

 シニアに向けた企画に力を入れているのはフジだけではない。テレビ朝日の「スーパーJチャンネル」では「年金支給日に聞いてみた」という特集をたびたび放送しているし、日本テレビの「news every.」でも「気になる! 年金に頼れない現実」を放送している。フジと同様、街頭インタビューを入り口にした、年金生活者の暮らしの実態を特集するものが目立つ。

 なぜ、各社ともこうしたシニア向けの企画を放送するのだろうか。理由は2つあると思われる。

 ひとつはこうした特集がもつ「バラエティ要素」だ。ニュース番組内の特集という位置づけでありながら、他人の生活を覗き見るような好奇心を煽られる。他人のお金をめぐる事情は誰しも興味深い。偶然、出会った人の興味深いエピソードに惹かれるという構成の力は、テレビ東京「家、ついて行ってイイですか?」などのバラエティ番組ですでに実証済みだ。他人の台所事情や、切実な悩みを知る。そうした“リアル”に触れる面白さが、年金企画にはある。

 もうひとつは、制作側の事情だ。作る側としても、まったくの新規企画ではないために、視聴率の予測の立てやすさがあるのではないだろうか。高齢者は若い世代に比べると比較的あけすけに自分の現状をさらけ出してくれるため、取材がしやすいという点もあるかもしれない。

 また、予算のメリットもある。これらの取材はディレクター自身が小型カメラを持って現場に赴けば、一人でも撮影することが可能だ。カメラマンを伴う必要もない。比較的低予算で制作できるのだ。

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