「嘘つき」発言に苛立つ習近平…「中朝友好の足形」を埋め、「金正恩」と8カ月間交流なし プーチンと北朝鮮との蜜月も一因か
「朝露軍事同盟」復活に警戒感
その後、習氏は今年の元旦には金氏に祝電を交換するが、習氏はバイデン米大統領とも祝電を交換しており、あくまでも儀礼的なものだ。習・金両氏の首脳会談は19年6月に習氏が平壌を訪問して以来、実現していない。それは世界的な新型コロナウイルスの流行で北朝鮮が国境を閉鎖していたためともいえるが、流行の終息後、金氏は昨年9月にロシア極東部を訪問したほか、今年6月にはプーチン氏が平壌を訪問し、両者は9カ月間で2回も首脳会談を行っているのに比べて、この間、習・金両氏の首脳会談が1回も行われていないのは極めて不自然だ。
とくに、金氏は6月19日、平壌滞在中のプーチン氏と「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結し、いわゆる「軍事同盟」を復活させた。プーチン、金両氏が軍事協力を公然と約し、万一、朝鮮半島で南北間の戦争が起きた場合、ロシアが北朝鮮を助けて軍事介入する可能性が浮上したのだ。中朝条約の軍事介入条項は死文化したと言われるようになって久しいので、朝露間の新条約により、中朝露3国間の関係は中国に不利な形でバランスが崩れ、これが中国をさらにいら立たせているのは確実だ。
かつて中朝両国は「唇歯相依の関係」あるいは「唇亡歯寒の血と血で固められた同盟関係」ともいわれてきたが、いまでは「唇歯の関係」は朝露両国関係であり、中朝関係は普通以下の関係になってしまった感がある。
北朝鮮労働者の中国派遣に「待った」
これを裏付けるように、韓国の中央日報は中国が7月上旬、北朝鮮に対して、中国内のすべての北朝鮮労働者の本国送還を要求したと報じた。これを受けて、北朝鮮は中国で外貨を稼ぐ一部の情報技術労働者をロシアに移動させているともいう。米政府系報道機関「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」も、北朝鮮が今年5月ごろから中国国内の北朝鮮大使館などの公館向けに一定年齢以上の労働者らの帰国を急ぐよう指示していたと伝えており、両国間で北朝鮮労働者をめぐる軋轢が生じているのはほぼ間違いないとみられる。
国連安全保障理事会の北朝鮮制裁委員会が3月に発表した報告書によると、北朝鮮は10万人の労働者を海外に送り出すことで、年間7億5,000万ドル(1ドル=約147.77円)から11億ドルを稼いでおり、出稼ぎは北朝鮮にとって極めて重要な外貨源だ。そのうちの9割は中国に滞在しており、北朝鮮労働者の帰還強要は、習氏の金氏への揺さぶりの一種で、金氏のプーチンとの関係強化に対する不満表明と見てとれよう。
また、習氏はプーチン氏が決めたウクライナ侵攻に対しても、支持を公言するものの、金氏がロシアへの弾薬などの武器供与を積極的に行うなか、習氏は極めて消極的な姿勢を維持しており、習氏とプーチン氏との関係にも異変が生じているようだ。
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