「彼に幻想、キノコで幻覚、気づけば病院……」 マジックマッシュルームの“味見役”にされた女子大生の悲劇

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“モルモット”

 テスターとは収穫したキノコを味見する役割のことで、“味見役”や“モルモット”とも呼ばれる。彼女は、男から栽培役だけでなくモルモットにされていたのではないか。私はそう考えた。だが、何を尋ねても彼女は男を庇う。理屈が通らなくても自分が犠牲になろうとする。たまにこのような被疑者に出逢うことがあるが、こんなに若くて律儀な女性は初めてだった。純粋なのか自暴自棄になっているのか。真意が掴めなかったが、とても素直で好感の持てる女性という印象は残った。

 その数日後、彼女の姉が別の女性を連れてやってきた。

「妹は専門病院に入院することとなりました。どうも体調がすぐれないようで。ご了承ください。こちらは妹の親友のB子ちゃんです。事情を知っていると言っています。話を聞いてもらえませんか。私はショックで……」

 そう言って肩を落とす姉の傍らで、彼女の大学の同級生だというB子は、まくし立てるようにこう切り出した。

「あの子、ずっと男に酷いことされていたんです。別れるように何度も説得したのですが、結局、こんなことなってしまって……。私にも責任があります」

 B子の話はこうだった。

 彼女は男に一目惚れし、言われるがまま薬物に手を染め始めた。密売用のキノコの栽培も覚えさせられ、収穫したキノコの味見もさせられていた。男は幻覚系のドラッグをやるとバッドトリップ(※気分が落ち込み、妄想や錯覚を生み、錯乱状態になったりすること)するらしく、覚醒剤しかやらない。そこで、彼女が味見役をやらされていたという。

 男から「お金を貯めて一緒にパタヤへ移住しよう。少しの間だけごめんな」と泣きつかれてテスターを続けていた、と……。男は彼女のレビューをもとにブツの密売価格を決める。そして、SNSには「当店所属のソムリエが厳選した魅惑の自家製MM(※マジックマッシュルームの隠語) ぐにゃぐにゃに曲がりますよ……」などといった広告を出して客を誘っていたという。

「死ねるかなと思って」

 B子はこうも説明した。

「実は、あの男は私と地元が同じで、今はドラッグのプッシャーをやってますが、高校を中退してからずっとホストをしていたんです。女狂いの整形マニアでいつも女に金をせびっていました。私にちょっかいを出したことも……。正直にお話すると、地元の仲間は彼から野菜(※大麻の隠語)などを買っていました。私がタイに遊びに行ったとき、たまたま彼らとツアーで一緒になって、語学留学中でタイにいた彼女を軽いノリで紹介したんです。そしたら彼女、本気になっちゃて……」

 男は無類の甘え上手で、容姿は韓流アイドル並み。異性との交際経験が一度もない彼女は、簡単に騙されてしまったという。交際は約1年半続くが、B子が見舞いに行った際、彼女はこんなことを口にしたそうだ。

「分かっていたの。もう飽きられて利用されているだけって。だけど、どこかで信じていたの。でも、もう身体が辛くて……。この間、彼に言われて作った、睡眠薬入りのキノコカプセルを沢山飲んだの。死ねるかなと思って。彼への当てつけの意味もあってね……。でも、だめだった。麻薬取締官とお姉ちゃんに発見されて助けられちゃった」

 この話を聞いたB子は衝撃を受け、姉に全てを打ち明けたという。

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