「彼に幻想、キノコで幻覚、気づけば病院……」 マジックマッシュルームの“味見役”にされた女子大生の悲劇

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第1回【真面目な女子大生はなぜ大量の「幻覚キノコ」を摂取したのか…麻薬取締官が「もはや人体実験」と絶句した壮絶な現場】からの続き

 著者が現役の麻薬取締官だった当時、ある女性からの相談が舞い込む。曰く、「妹が交際相手に騙され、マジックマッシュルームの栽培をさせられている」。“妹”の自宅に踏み込むと、泡を吹いて寝室の床に倒れ込んだ彼女と、栽培中の幻覚キノコ、さらに「メキシカンBZ ブレンド」などと殴り書きされたメモが見つかった――。【瀬戸晴海/元厚生労働省麻薬取締部部長】

「俺が責任とるからさぁ」

 彼女は発見からおよそ3時間後に正気を取り戻したが、既往症の“慢性腎不全”が悪化していることが分かったため、引き続き1ヵ月の入院が必要となった。

 その翌日、“男”から電話があった。

「俺も彼女も巻き込まれたんすよ。俺が責任取るからさぁ。用事すまして来週中には必ず出頭するんで。約束するから」

 女性が取締官によって確保された際、このように電話をしてくる男は珍しくない。しかし、“出頭”となると話は別だ。老舗の代紋を背負ったヤクザか、昔気質の男でない限りは、まず姿を現すことはない。女を犠牲にしてでも逃げる。それが最近のチンピラの傾向だ。かつての不良が持っていた矜持や不文律など、もはや崩壊していると言っていい。そして、予想通りというべきか、男は出頭して来なかった。

「彼は、本当に関係ありません……」

 彼女は退院したが、継続治療が必要となり、当面は身柄不拘束のまま取調べを進めることとした。

――それにしても危なかったな。からだは大丈夫か。男から連絡はないか?

「心配かけてごめんなさい……。彼から連絡はありません。携帯も通じないし。本当です」

――君のメモに書いてあった「メキシカンBZ ブレンド」は、メキシカンと睡眠薬の混合物のことだろ。男の指示でブレンドしたのか。カプセル10個なんて人体実験だろう。どんな効き目があったのか分からないが、あまりにも危険過ぎるぞ!

「ちょっとやりすぎちゃって……。吐き気の後に眠くなって、そのときは天井の色がくっきりと鮮やかになったかな。途中から何だか分からなくなったけど。でも、今回のことと彼は関係ありません」

――そもそも、からだが悪いのに、どうしてキノコなんて使ったのか。

「うーん、よくわかんない。現実逃避でしょうか、ちょっといろいろあって。彼に幻想、キノコで幻覚、気づけば病院……なんちゃって。冗談です、すみません」

――キノコは密売用として栽培させられていたんだな。睡眠薬も大量にあったぞ。

「キノコの栽培はネットで覚えました。本当に彼は関係ありません。睡眠薬は私がネットで買ったものです。私が悪いんです。刑務所でもどこでも行きますから……。ごめんなさい」

――メモに“最後だから”とか“このまま”と書いてあったけど、事情を聴かせてくれないか?

「……お願いです。本当にすみません。今はお話しできません」

――幻覚の経過もメモ書きしていたが、どうしてなんだ? “テスター”にされていたんだろう。酷いことする男だな。

「……自分の意思です。今は話せません。もう少しだけ待ってください」

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