夏の甲子園は守って勝つ!“飛ばないバット”の導入で「新たな守備戦術」が見えた…「打率最下位」のチームが打って出た“割り切った作戦”
アクシデントにより試合が6分間中断
1死一、二塁の場面で、打席には4番・杉浦正悦を迎えた。愛知県大会での打率.476を誇る強打者に対し、外野手は事前の準備通りに“フェンス手前”まで下がった。
2球目に二走が三盗に失敗。2死一塁になったが、長打なら当然ながら先制点を許してしまうシチュエーションが続く。3球目を捉えた杉浦の一打は、鋭いライナー性の当たりとなって、左中間へ飛んで行った。
「あれ、定位置だったら、外野の頭を超えていると思います。そういう意味では、いい守備シフトが取れたのかなと思います」
中村がそう振り返った“あわや左中間突破”の一撃は、深めのポジショニングだったセンター・小倉侑大がランニングキャッチ。「粘り強く守備をしてくれました。もう、宮崎県大会から、こんな試合展開が多かったんで」という橋口光朗監督も、ベンチから打者ごとの守備隊形を、大声と身ぶりで指示し続けた。
そのきめ細かい戦いぶりでピンチの芽を摘んでいった宮崎商は、2点を追っての6回に追いつくと、7回には4番・上山純平の左前打で勝ち越し。一度は3-2とリードする展開に持ち込んだのだ。
ただ、思わぬアクシデントが襲ったのは、その勝ち越した直後の7回だった。中京大中京の1番・神谷倖士朗の当たりが、ショート・中村の後方付近にふらふらと上がった。
「自分と(二塁手の)甲斐(夢都)の守備範囲は広いというのがあるので、小フライとか、あの時のような高いフライが少し風で戻されるような打球とかは、全部自分たちが追って行って、声を掛け合うというところも(練習や試合で)やってきたんで」
中村が、体を捻りながら、背後に飛んだ。しかし、センターとの間にポトリと落ち、滞空時間の長かった当たりゆえに、神谷は二塁を陥れた。
その時、中村の左足がつった。治療のため、ベンチ裏に下がった。試合が6分間、中断された。
「あの治療の場面から、ちょっと流れが変わってしまったところがあったので、そこに関しては、チームメートに申し訳ないという気持ちです」
[3/4ページ]