夏の甲子園は守って勝つ!“飛ばないバット”の導入で「新たな守備戦術」が見えた…「打率最下位」のチームが打って出た“割り切った作戦”

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大胆な守備陣形

「中京大中京さんの打球は、ちょっと詰まっても、動画を見る限りでは、打球が伸びている傾向があったので、そのことを含めて、監督も外野の守備位置を下げさせましたし、自分からも外野手には指示を出しました」

 長打力のあるバッターが打席に立ったときには、走者の有無にかかわらず、外野手を定位置から大きく後ろに下げさせた上で、ポジショニングさせたのだ。

 甲子園には、外野手にフェンスが近いことを知らせるために、フェンスから幅4.5メートルの「ウォーニングゾーン」が設置され、そのゾーンは人工芝になっており、天然芝との切れ目には、白線も引かれている。

 外野手は、そこから2メートルほど前。定位置からは3メートル近く後ろになるその位置に、守備位置を取った。もちろん三塁打を二塁打に、二塁打をシングルで止めるという狙いもあるのだが、合わせて、ライトからレフトへの浜風が強く吹く夏の甲子園で、その慣れない環境も相まって、長打のある打者の高く上がったフライは、背走しながら追うよりは、自分の“前”に向かって捕りに行く方がより安心でもある。

 ただ、この場合だと、内野手の背後と外野手の前が大きく空く。つまり、ヒットゾーンが広くなり、詰まった当たりが内外野の間に落ちるポテンヒットの可能性も高まってくる。

 中村は、だから「若干、二遊間寄りの、後ろ気味に守りました」と明かす。

「自分は、肩にも自信があるので、後ろのフライを警戒しながら、前のゴロにも警戒するという守りでした。三遊間には自信があったので」

 打力では中京大中京に劣るという、自分たちの“弱み”は分かっている。だから、まず失点を避ける。そのために、長打はできるだけ防ぎたい。その大胆な守備シフトが、いきなり一回から実を結ぶシーンがあった。

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