NISAとiDeCoは結局どちらを優先すべき? ファイナンシャルプランナーが出した結論は
受け取り時の金額に気を付けないと損をするケースが
注意点もある。それは拠出時に節税メリットを受けられる反面、額によっては受け取り時に課税されるケースがあることだ。
「iDeCoの資産を一括で受け取る場合、税の計算を行う際に差し引ける『退職所得控除』が利用できます。『退職所得控除』は退職金の計算でも適用されますが、勤続20年までは毎年40万円、勤続21年からは毎年70万円が積みあがっていくような計算をします。例えば22歳から60歳までの勤続38年の場合、退職所得控除は2060万円となるため、この金額まで非課税で受け取れることになります」(同)
同じ人が年間24万円(月2万円)を60歳までiDeCoに拠出した場合、元本は912万円となる。退職金が1148万円以下であれば、課税額は0円ということになる。iDeCoの運用で大きく増やせた場合や勤務先の退職金が多い人は受け取り方を工夫したい。
では、分割で受け取る場合は?
「公的年金も含めて65歳未満で年間60万円、65歳以上で年間110万円以下であれば課税されません。もちろん課税されないことがすべてではありませんが、ご自身の公的年金とiDeCoの分割の受け取り額を意識して調整するケースもあるかと思います」(同)
逆に言えば、この条件から漏れてしまうと、現役時代には節税効果を得られたものの、受け取り時には課税される可能性もあるということになる。また、制度改正の可能性にも注意を払う必要がある。
iDeCoに向いている人とは?
最後に、iDeCoの制度が特に有利に働く人のパターンを聞いた。
「大きく2パターンあり、1つは“年収は高いが退職金のない会社員”。もう1つは“自営業で稼ぎの多い人”です」(同)
また、いざ拠出を決めた場合には「上限いっぱい」で拠出し続けたほうが望ましいという。
「NISAと異なり、iDeCoは口座開設に2829円、口座維持に年間最低2052円というコストが発生します。そのため、上限いっぱいで運用を続けないと相対的に“手数料が高い”という状況になります」(同)
仮に会社員として、月2万円を60歳までずっと拠出し続けるのは少し怖い気もするが……。
「iDeCoをやるかどうか1つの目安になるのは、預貯金が800万円以上あるかどうか。それだけ余裕資金があれば、急な病気など、不測の事態にも対処が可能だからです。既にまとまった貯蓄があることは、月2万円を拠出し続けられるかの目安にもなるかもしれませんね。逆にそこまで余力のない人は、現状ではNISAだけで十分かも知れません」