いまやインバウンド客から見放される「豊洲 千客万来」の厳しい現状…「築地場外のような“市場感”がなく、1階はいつも閑古鳥」との指摘も

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 華々しい幕開けで大きな話題となった「豊洲 千客万来」が、この8月でオープンから半年を迎えた。インバウンド客の取り込みが大いに期待されていたはずなのだが、早速ボロが出始めていて、一部では「閑古鳥が鳴いている」状況まで見られるという。

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 銀座、浅草、新宿――。東京都内の至る所が外国人観光客であふれかえっている。政府は2030年までに訪日外国人旅行者数を6000万人に増やすという目標を掲げていて、昨年は2500万人と、コロナ前の8割程度にまで回復。現時点でも「オーバーツーリズム」の問題が指摘されるほど、訪日客が押し寄せている状態だ。

 そんな中、東京都肝いりの事業であり、インバウンド需要の取り込みが大きく期待されていた“あの施設”は、今どうなっているのか。東京の中央卸売市場が築地から豊洲に移って5年が経った今年、満を持して開業した「豊洲 千客万来」である。

 この8月にオープンから半年を迎え、大手メディアで取り上げられる機会はめっきりなくなった。そこで平日のお昼時に足を運んでみると、夏休みシーズンということもあってか、それなりの人出で賑わっているようだ。

誘引力も感動もない

 しかし現地でまず気が付くのは、意外にも外国人観光客がそれほど多いわけではなく、むしろ日本人客が目立つ点だ。

「インバウンドの観点から見て、とても成功しているとは言えないと思います。開業当初で今はそれなりの国内客がいますが、このままでは、それも来年以降は厳しくなるでしょう」

 そう話すのは、フードビジネスコンサルタントで、YouTubeでも外食産業に関する情報発信を行っている永田ラッパ氏。商業施設で飲食フロアのプロデュースも行う立場から、同施設の問題点についてこう指摘する。

「豊洲という場所柄、近くにこれといった観光地はないので、“千客万来目当て”で足を運ばなければならない施設です。それにもかかわらず、『このお店でこそ食べてみたい』『そこでしか体験できない』というものがないんです。入っているテナントを見る限り、一部を除いて、どのようなコンセプトで、どのような層を狙って誘致したのかが見えないところばかり。だからこそ、『このお店があるから行ってみよう』という誘引力もなければ、行ってみて『こんなお店もあるんだ』という感動もないんです」

 施設のつくり方にも問題があるという。

「食のテーマパークを謳っている割には、築地場外のような“市場感”がありません。椅子やテーブルが各店舗の前に設置されているわけでもないので、おいしそうな様子や香りが外から見ていても伝わりづらい。館内をぐるっと回ってみても、『結局買うものがなかったね』という方も少なくないのではないでしょうか」

 さらに、と永田氏。

「3階建ての施設の中で、2階部分が駅直結の実質的な玄関口になっていて、顧客が1階にはほとんど回遊しないつくりになっているのは致命的です。フードコートや食べ放題のレストランがある3階にはスムーズに移動できるようになっている一方で、1階への導線は目立たないところにあるだけ。何度訪問しても、1階のテナントさんは閑古鳥が鳴いている状態です」

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