「18禁の同人誌」を送ってきたファンも 「悪気がないのは分かるんですが……」現役漫画家が明かした「二次創作」への違和感
無許可で作った二次創作の“グッズ”はありなのか
A氏はそれでもまだ、同人誌を同人誌即売会だけで売っているのなら、「本当は認めたくないけれど、容認したい」と理解を示す。許せないのは、同人作家の以下の行為だという。
「秋葉原や池袋で同人誌を販売している店に流通させたり、最近では電子書籍にして売っている人もいるそうですね。これって商売ですよね? おかしいでしょう? 同人誌即売会以外の場所で販売するのは、どう考えてもファン活動のレベルを超えています」
A氏は、「私の作品で商売している同人作家は、サイン本をフリマサイトで売る転売屋より嫌い」なのだという。
「サイン本を転売屋が買っても私に印税でお金が入ります。でも、同人作家は私のキャラクターをタダで使って利益をあげている。こっちがどれだけ頑張ってキャラを生み出し、どれだけ思い入れがあると思っているんでしょうか?」
近年は、同人作家が二次創作の同人誌にとどまらず、グッズを販売する例も多い。20年ほど前は紙袋や便箋程度のものだったが、近年は印刷所の技術水準が向上し、グッズのクオリティが急激に上昇した。そのため、企業がライセンスを得て作る市販品と遜色ないか、それ以上のレベルのグッズが登場している。
アクリルスタンド、ストラップ、抱き枕、なんとブランケットまで製作しているサークルもある。ガレージキットなどの一部の立体造形物に関しては、メーカーに版権の許諾を得るのが慣例となっているが、二次創作の製作物のほとんどが、著作権者や出版社に版権使用料が支払われていない。紙製品くらいしか作れなかった時代の暗黙のルールが、現代に適用されていることに違和感を覚えずにはいられない。
同人誌の在り様について議論がなされるべき
ちなみに、筆者はかつて同人誌を制作したこともあるし、コミックマーケットにも参加した経験がある。また、筆者の知人の漫画家に話を聞くと、若手を中心に二次創作を容認する人の方が実態としては多い印象だ。
国会議員の漫画家・赤松健は同人誌即売会を擁護しているし、自身の漫画の二次創作を歓迎している。公式のイベントのなかで、作者公認の同人誌即売会を開催した漫画家もいる。特にSNS世代の漫画家は同人誌出身の作家も多いうえ、同人誌即売会でスカウトされた経験をもつ漫画家もいるから、二次創作に抵抗がない人が多いようだ。
その一方で、A氏のような考えの漫画家がいることも忘れてはならない。漫画家といっても考え方は皆様々であるし、それぞれの意見が尊重されるべきである。ただ、漫画家は基本的に個人事業主であり、特にXなどのSNS上での意見表明は、ファンの反応を見極める必要があることから、一朝一夕には難しい。A氏が筆者にこの件を打ち明けたのもそのためであった。
「著作権者である私が、二次創作をやめてくださいと言えば止められるんですよ。ただ、ファンの人たちは楽しんでやっている人が大勢。その足を引っ張ることは漫画家には難しい」と、A氏は悩みながら仕事をしているという。二次創作、同人誌はどうあるべきだろうか。漫画のテレビドラマ化の問題が騒がれ、生成AIについての議論も盛んになり、著作者人格権がクローズアップされるなかで、多方面から建設的な議論がなされるべきであろう。
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