「18禁の同人誌」を送ってきたファンも 「悪気がないのは分かるんですが……」現役漫画家が明かした「二次創作」への違和感
二次創作の同人誌を嫌う理由
筆者はこれまでに多くの漫画家を取材してきたが、会食をしながら話をすると、二次創作の同人誌に否定的な漫画家が思った以上にいることに驚く。
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二次創作とは、『ドラゴンボール』や『鬼滅の刃』などの既存の漫画のキャラクターやストーリーを第三者がアレンジして創作された、パロディ漫画やイラストのことである。コミックマーケットなどの同人誌即売会で販売されている同人誌にはオリジナルも多いが、人気を集めるのは二次創作の作品が多い。
その執筆にあたって、同人誌を制作する作家(同人作家)は基本的に著作権者の許可を得ていない。そのため、著作権者が知らないところでキャラクターの性格が改変されたり、場合によっては淫らな姿になったりすることもあるのだ。二次創作が嫌いと言う人気漫画家A氏はこう話す。
「はっきり言いますが、私は二次創作の同人誌が嫌いです。最近、著作者人格権の問題が議論になりましたが、二次創作にはあまりみなさん触れたがりません。しかし、私の漫画のキャラクターで成人向けの同人誌を無断で作る行為は、明確に著作者人格権を侵害していると思います」
当初、このインタビューは実名で行われる予定であったが、残念ながら匿名での出演となってしまった。匿名になったのにも理由がある。
「漫画家の間でも無言の同調圧力が結構あって、二次創作について『嫌だ』と大きな声では言いにくい雰囲気がある。周りの漫画家は二次創作について寛容なこともあって、私はやはり実名で訴える勇気はありませんでした」
同人誌の売上が作者に還元されていない
二次創作が著作権侵害に当たるのかどうかという点でいえば、限りなく黒に近いグレーである。そもそも日本の著作権問題は親告罪だ。二次創作の同人誌はあくまでも「ファンが楽しんで作っているもの」という建前があり、出版社や作家が黙認しているため、成り立っているのである。こうした風潮に対して、A氏が疑問を呈する。
「ファン活動だと言うけれど、実際はめちゃくちゃ儲けている同人誌作家もいますよね。その利益は私には1円も還元されていない。これには納得がいきません。同人誌作家は最近問題になった漫画原作のドラマを遥かに超えるレベルで私のキャラの設定を改変して、あろうことかその本を売って利益を得ている。これがファンの活動といえるのでしょうか?」
成人向けの同人誌を嫌う漫画家に配慮し、同人活動はつつましやかに行うのが暗黙のルールであった。しかし、A氏のもとには、あろうことか自作の18禁同人誌を送ってきたファンがいたという。ファンには悪気はなかったのだと思うが、自分が生み出したキャラがあられもない姿で絡み合っている絵を見て大きなショックを受けたそうである。
「SNSをやっていると、そういった二次創作がどうしても目につくのがしんどいですね。もちろん、ファンは私の作品が好きなのだと思うし、悪気がないのは十分にわかるんですけれどね……。悪気がないから責める気にはならないし、悲しいんですよ。二次創作に理解のある漫画家もいます。ただ、全員が全員、二次創作を許容しているとは思わないでほしいし、やるならひっそりとやってほしいです」
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