「ガラスの天井」を突き破るハリス氏だが、追い風が続く保証はない…国民の5人に3人が「米国は既に不況」【米大統領選】
ディズニーのテーマパーク部門も苦戦
統計の上では引き続き堅調な米国経済だが、米国人の景況感はそれと大きく異なっている。米フィンテック企業「アファーム」が7月下旬に公表した調査結果によれば、5人に3人が「米国は既に不況に陥っている」と回答した。回答を平均すると「この不景気は昨年3月に始まった」と感じていることも明らかになっている。
足元の経済状況では、国内総生産(GDP)の3分の2を占める個人消費に黄信号が灯りつつある。15日に公表された7月の小売売上高は前月比1.0%増となり、市場予想(0.3%増)を大きく上回った。
これにより、「第3四半期のGDPも高い成長率が見込める」との予測が出ている一方、企業の安売り努力が消費を支えている面が顕著になっていることから、「先行きの減速感が強まった」との懸念が生まれている。
この傾向が既に顕在化しているのがレジャー消費だ。コロナ禍の外出抑制の反動で価格が上昇しても勢いがあったが、レジャー関連企業の第2四半期の業績は振るわなかった(8月11日付日本経済新聞)。ディズニーのテーマパーク部門も苦戦している。
家計のカネ回りも悪くなるばかりだ。第2四半期の米家計におけるクレジットカードの債務残高は1兆1400億ドル(約165兆円)と過去最高を記録し、支払いが30日以上遅れた延滞率も9.05%と13年ぶりの高さとなっている。個人消費に悪影響をもたらすのは時間の問題だろう。
現職大統領の敗北は過去に4回
若者の動向に注目が集まりがちだが、米国でも高齢化が急速に進んでいる。昨年の高齢化率は17.6%と、高齢社会(高齢化率が14%以上)の仲間入りを果たした。
高齢者、特にベビーブーマー(1946年から1964年に生まれた世代)にとって、老後の支えは株式投資から得られる収入だ。
8月初旬に生じた米国株式市場の混乱は収まりつつあるが、相場を牽引してきたハイテク株には依然として著しい下げ圧力がかかっているとの指摘がある(8月13日付ブルームバーグ)。株式市場が再び急落する事態となれば、バイデン政権のナンバー2であるハリス氏にとって大きな逆風となるのは確実だ。
以上のように、11月5日の大統領選に向け、米国人の景況感がさらに悪化する可能性があると言わざるを得ない。
戦後、再選に失敗した現職大統領は4人いる。2020年のトランプ氏については多種多様な敗因分析があるものの、他の3人はいずれも景気後退が敗因の1つだった。現職の副大統領であるハリス氏は見事当選を果たすことができるのだろうか。
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