激戦続く夏の甲子園で「タイブレーク」に募る“モヤモヤ”とした違和感…SNSで不満を訴える投稿が相次ぐ理由

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数百年の歴史を無視!?

 一方、SNSを中心としてタイブレークに不満の声が多いことについて広澤氏は、「野球の本質という視点から考えると、異論が多いのも頷けます」と言う。

「大英博物館に所蔵されている16世紀の絵葉書には、野球で遊んでいる人々の姿が描かれているものもあるそうです。またアメリカでは18世紀にマサチューセッツ州で『野球禁止』の立て札が掲示されていました。野球には少なくとも数百年の歴史があり、様々な紆余曲折を経て現在のルールになりました。例えば、かつて野球の四球は“フォアボール”ではなく、九球の“ナインボール”でした。そのため今より試合時間は長く、投手の投球数も多かったそうです。数百年に及ぶ様々なルール改正を経て、『9回裏で決着つかなければ延長戦』というルールに私たちは慣れ親しんできました。ところが夏の甲子園では10回表からタイブレークになりますから、違和感を覚える人が続出するのは当然でしょう。タイブレークで勝敗を決めていいのかという疑問の声が出ることも頷けます」

 この違和感をどう考えればいいのか。実はタイブレークを導入するにあたり、高野連は複数回、都道府県の高校野球連盟の加盟校にアンケート調査を行っている。広澤氏は、この調査が不徹底だと指摘する。

延長戦の復活

「タイブレークの実施、不実施を決めるべきなのは誰かと言えば、本当は野球部員のはずなのです。それも論点をしっかり整理して、『自分たちの肘や肩、体に悪影響を与えないという観点からタイブレークをどう考えるか』と野球部員にアンケートで質問すべきです。試合や練習で体の負担を直に感じている野球部員の声を、もっと直接的に反映させる必要があるでしょう。また現実的な解決策の一つとして11回裏まで、つまり2イニングは延長戦を行ってもいいのではないでしょうか。野球ファンの違和感は『9回裏の白熱した攻防が終わると急に10回表からタイブレークが始まる』ことが原因だからです。11回の裏でも決着が付かない場合はタイブレークとルールを改正すれば、少しは不満の声も減ると思います」(同・広澤氏)

デイリー新潮編集部

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