激戦続く夏の甲子園で「タイブレーク」に募る“モヤモヤ”とした違和感…SNSで不満を訴える投稿が相次ぐ理由

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小学生と中学生の体

 野球評論家の広澤克実氏はポニーリーグの理事長も務めている。ポニーリーグはアメリカ発祥の硬式野球リーグで、主に小学生と中学生が対象だ。栗山英樹氏、石井一久氏、高橋由伸氏など、日本でも多くのプロ野球選手を輩出していることでも知られる。

 また「登録選手は全員が試合に出場する」、「成長期の子供をケガや故障から守る」など、革新的なルールを実践していることでも評価が高い。特に投手には試合だけでなく練習でも厳しい球数制限を課している。

 プロ野球だけではなく、アマ野球の現状にも詳しい広澤氏に甲子園のタイブレークをどう考えるか取材を依頼した。

「アメリカのデータではありますが、12歳から15歳までの間、一回でも肘か肩の手術を受けた投手は、プロ選手になってから、負傷した靭帯などを再生させるトミー・ジョン手術を受ける可能性が高くなることが分かっています。逆に15歳までに肘や肩を痛めなければ、プロでトミー・ジョン手術を受ける可能性が減少します。このことから日本の野球界においては、まずは小学生と中学生の体を守ることが重要だと分かります」

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 リトルリーグの投手は、高校野球の投手以上に体に負担がかかっていると、関係者が懸念しているのをご存知の方も多いだろう。

 ちなみに同じ理由から、日本発祥の軟式野球が世界的に注目されているという。広澤氏によると硬式より球が軽いため投手への負担が少なく、「12歳以下は軟式でいいのではないか」という議論も出ているそうだ。

「当たり前のことですが、高校1年生は16歳です。アメリカの調査結果を字義通りに受け止めれば、高校野球の選手は肘や肩の負担をそれほど心配しなくてもいいことになります。ただ、都道府県の予選を勝ち抜き、甲子園球場のマウンドに立つ投手は、大半が小学生や中学生の頃からエースを務めていたでしょう。そうなると、やはり高校野球でも肘や肩に対する配慮が必要だという考えにも合理性があります」

 広澤氏はタイブレークを評価できる点として、「試合に出場する高校生の体を守るのだという理念に貫かれたルールだとは思います」と言う。

「さらに公立高のチームなど少数の部員しか集められない野球部でも、多数の部員を擁する名門野球部に勝てるかもしれない、という可能性を示しました。複数の投手を揃えられる野球部となると、どうしても部員の多い名門高に偏ります。昔のように15回や18回まで延長戦を行えば、部員の少ないチームは投手の数も少ないことが多く、名門高の野球部が勝つ確率は高くなると考えられます」

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