激戦続く夏の甲子園で「タイブレーク」に募る“モヤモヤ”とした違和感…SNSで不満を訴える投稿が相次ぐ理由

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 全国高校野球選手権大会は8月17日、島根の大社と西東京の早稲田実業が対戦し、タイブレークの延長11回裏で大社が3−2の劇的なサヨナラ勝ちを収めた。守る早実の内野5人シフト、大社の見事なバントなど名場面の連続に「甲子園史上に残る激闘」と称賛の声が相次いだ。しかし、XなどSNSに“モヤモヤ”とした想いを吐露した野球ファンも少なくなかったようだ。

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 なぜ野球ファンは“モヤモヤ”とした違和感を覚えたのか──。それはタイブレークに納得がいかないからだ。さっそくXの投稿を見てみよう。

《個人的にタイブレーク制度はどうなん?て感じ》、《タイブレークだけはやだ!》《どうしても「タイブレークじゃなかったらどうなってたのかな…」ていう気持ちが出てくるので複雑です》、《延長になった瞬間、違うスポーツが始まる、という感じですよね》──。

 担当記者は「タイブレークの導入は、延長戦の歴史と密接な関係があります」と言う。

「夏の甲子園は1915(大正4)年から始まりましたが、当時は延長が無制限でした。そのため1933(昭和8)年に行われた中京商と明石中の試合は延長25回裏、1−0で中京商のサヨナラ勝ちという、まさに“甲子園史上に残る延長戦”として今も語り継がれています。ところが次第に投手の体への負担が看過できないと、社会的な議論が巻き起こるようになりました」

 1958(昭和33)年の春季四国大会では徳島商の投手・板東英二氏が準決勝で延長16回、翌々日の決勝戦では延長25回を投げ抜いた。板東氏の力投はローカルではなく全国ニュースとして報じられたことで賛否が沸騰。反響を重く見た日本高等学校野球連盟(高野連)が「延長18回裏で決着がつかない場合、翌日に再試合を行う」ことを決める。

タイブレークは“正義”

「ところが1998(平成10)年、PL学園と横浜が対戦した準々決勝で、横浜の投手・松坂大輔氏が延長17回を完投し、再び議論が沸き起こりました。結果、夏の甲子園は延長18回の再試合規定が15回に短縮されました。その後も主に投手の負担を軽減させるためのルール見直しが相次ぎ、夏の甲子園では2018(平成30)年の大会から『延長13回表から無死一・二塁の設定』でタイブレークを導入。さらに昨年からは延長10回表からタイブレークを行うことになったのです」(同・記者)

 もちろん野球ファンは「選手の負担軽減」が正論だとは分かっている。その意味でタイブレークは“正義”なのだ。そして、だからこそ、SNSにモヤモヤを投稿する──。

「Xの議論で興味深いのが、『8対8の試合でタイブレークなら納得するが、0対0の試合では違和感を覚える』という指摘です。緊迫した投手戦が続き、両チームとも1塁にランナーを送ることさえ稀なゲーム展開だったのに、延長10回表になると突然、無死ランナー1、2塁から始まるわけです。確かに、これは“モヤモヤ”とした気持ちになります。他に目立つのは『タイブレークは負けたチームがかわいそう』という指摘です。タイブレークは運の要素が強いと考えている野球ファンは少なくありません。9回までは互角に渡り合っていたのに、延長10回でバントや幸運なヒットであっという間に決着が着いてしまうことに納得がいかないのです」(同・記者)

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