主題歌担当のドラマ「クリスマス・イヴ」は「テレビの前で正座して観ていた」 辛島美登里が語った大ヒットの裏側
声の大切さ
ツアーを年間数十本こなすようになり、ファンの期待に応えられているかという不安は常にあったという。売れている曲を届けることでファンに納得してもらえるとの思いがある一方で、心配だったのは、自身の喉だ。
「子どもの頃はよく扁桃腺を腫らす子で。喉が弱くて、きちんとしたボイストレーニングもしていなかったし、ツアーが初めての頃は、体調を保つのはすごく大変だな、と気付かされましたね」
今はボイストレーニングをしているが「ちょっと前まで声に関しては無頓着でした」と告白する。もともと自身を「詞曲を書く人」と捉えており、歌はその次についてくるとの考えから、極論すれば「歌はうまくなくてもいいだろう」ぐらいの気持ちですらいたという。聴く側からすれば、あれだけ魅了される声なのに、である。
「自分の作った詞と曲を再現できれば、それ(歌、声)は個性と思ってもらえれば。自分ではここがダメ、そこもダメと思うことは多いですが、それでもいい声、歌と言われるのは本当にありがたい。せめてそのレベルを維持しておかないと。私にとって歌手という肩書きは重いんですよね。でも、辛島の声で歌う曲を辛島が書いているという気持ちもあるので、自分の声に冒険させたい意欲もあるんです。それだけに自分の声を維持しなきゃと思うんです」
稲垣潤一とのデュエット、小田和正のカバー
詞曲の提供者としての辛島は、永井の前後にも、斉藤由貴や酒井法子、林原めぐみ、観月ありさ、森口博子らと携わってきた。だが、歌手としてコラボレーションしたのは、かつて同じレコード会社(ファンハウス)に所属していた稲垣潤一だ。
当時は無口を全うしているイメージがあった稲垣を、辛島は「カッコいいけど怖い大先輩」と思っていたと笑う。その後、何度か対談の機会があったものの、そんななイメージは変わらなかった。
2008年に稲垣のデュエットカバーアルバム「男と女ーTWO HEARTS TWO VOICESー」で辛島に声が掛かった。デュエットしたのは、今井美樹の「PIECE OF MY WISH」。その頃から稲垣の表情も柔和になり、会うごとに「すごく優しくなった」という。
「でもお互い、不器用で照れ屋なんです。デュエットだから、曲中に1度や2度は目を合わせて歌う箇所が欲しいところなんですけど、私は1度も目を合わせる余裕がなくて。最近、テレビでご一緒したときは、最後の最後にようやく目が合ったんですけどね」
ソロだと少しニュアンスを変えてもいい場合があるが、デュエットだと相手もあり、そうはいかない。お互いに緊張しているのもあり、その緊張が解けた最後にようやく目を合わせられるようになってきたのだという。
一方、学生時代から憧れていたのは小田和正。2012年にカバーアルバム「Love Letter」を発売し、近年は小田のライブを何度も訪ねている。その際に「たしかなこと」を弾き語りで歌っていることを伝えると「ピアノで弾いたんだ!」と喜んでくれたという。憧れのアーティストとの交流は辛島の原動力の一つにもなっている。
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