主題歌担当のドラマ「クリスマス・イヴ」は「テレビの前で正座して観ていた」 辛島美登里が語った大ヒットの裏側

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第1回【「サイレント・イヴ」の辛島美登里 大学時代までは「就職して、見通しの明るい人と結婚するのが一番いいと思っていた」のに…】の続き

 永井真理子に提供した曲のヒットで、自身がシンガー・ソングライターとしてデビューすることになった辛島美登里。ドラマ主題歌となった「サイレント・イヴ」などヒット曲が増え、歌うことを求められ続ける一方、ファンのリクエストを募り名曲を披露するコンサートなども開催している。そんな辛島のロングインタビュー第2回は、稲垣潤一とのデュエットや小田和正のカバー、「今できることを今やらねば」と考えるに至った経緯について。精力的に活動を続けるモチベーションはどこから湧いてくるのか?

(全2回の第2回)

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「サイレント・イヴ」の大ヒット

「時間旅行」(1989年)での正式デビューで、辛島の生活は一変した。曲を書いてスタジオで歌うという“内向きの作業”から、観客に向けて歌い、レギュラーのラジオ番組を持ったり、テレビや雑誌に登場したりという“外向きの作業”へ。さらにソングライターの活動も同時並行した。それでも「人前に出て歌うのは苦手だった」といい、コンサートで歌詞を間違わないように、合格点を取れるようにしたいと願っていたという。

「だから自分の芯から楽しい、という感じではなくて、皆さんがいることは嬉しいけれども、プレッシャーのほうが大きかったなあ」

 それでも曲を書きたい、出したいという欲求はあり、「ここがうまく行けば、次のアルバム曲が書けるかも、出せるかも」という思いが自身を突き動かしていた。

 翌1990年には、9月に人気アニメ「YAWARA!」(読売テレビ制作)の2代目エンディングテーマ「笑顔を探して」を発売し、スマッシュヒット。さらに同年11月、ドラマ「クリスマス・イヴ」(TBS)の主題歌「サイレント・イヴ」が発売された。年末に向かう世相の中で、街に「サイレント・イヴ」が流れることが多くなった。

テレビの前で正座して見ていました

「コンビニで、どこかで聞いた感じの声だな、と思って、あ、私だ、と気付くこともありましたね。今、CDを聴くときもそうですが、『ここの音程、ちゃんと歌えてるな、良かった』と安心したりして。皆さんの日常に自然に溶け込んでいてありがたいな、とほのかな感謝を抱いたりもしていましたね」

 ドラマの山場で流れる「サイレント・イヴ」。後に同じTBSドラマで緒形拳が主演した「愛はどうだ」の主題歌となった「あなたは知らない」など、いずれも効果的に使われた曲を辛島はどう聴いていたのか。

「本当に嬉しくて。本当に流れるのかしらとも思って。録画をすることもありましたが、できるだけオンタイムで見たいと思って。始まるとテレビの前で正座して観ていましたね。『本当に流れてる!』という感じでした」

 娘の活躍を応援していた両親。母は「頑張りなさいね」との言葉を常に贈ってくれるものの、父からは一言もなかった。だが、寡黙な父は実家でテレビを見ていて、辛島の母に「テレビに出るわよ」と教えられると、そそくさと席を外していたという。辛島本人と同様に、大丈夫なのか、心配だと思う気持ち以外に「照れくささもあったんでしょうね」と、大正生まれの父の気持ちを思いやる。

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