「死にたい気持ちを忘れるために店を再開」 能登半島地震で妻子を失った居酒屋店主が語る決意 「自力で調査してビル倒壊の理由を明らかにする」

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自力で調査する

 現在、倒壊したビルの現場は国土交通省が現地調査に入っており、結果が出るのは秋。楠さんは所有者でないことから立ち入ることができないのだ。

 一方、石川県の地元紙記者によると、

「6月には地震などで壊れた建物を所有者全員の同意がなくても公費解体できるようになりました。輪島市としても地震の象徴のようなビルが公道に倒れたままなのはまずい。国の調査が終わり次第撤去したいのです」

 対して、楠さんはすぐに公費解体をしないよう求めている。ビルが倒れてきた理由と責任をはっきりさせるためだ。

「妻や娘はビルに殺されたと私は思っています。あれが倒れなかったら家は地震に耐えていたはず。だから責任は当然ビルの所有者にある。建築士の方も根元から倒れているのを見て“おかしい”と話しています。二人がどうして死ななくてはならなかったのか、国が調べても分からないところを自分の力で調査するつもりです」

「お金がないから調べられない、とするわけにはいかない」

 店を再開したのはそのためでもある、と楠さん。

「建築士さんから、現地のボーリング調査をしたほうがいいと言われています。費用は1メートルあたり1万円。固い地盤に当たったら5万円に跳ね上がる。建築士の毎月の手当てなどにもかなりのお金がかかる。でも、お金がないから調べられませんとするわけにはいかない。だからここで一生懸命稼がなくてはいけないのです」

 ともすれば折れそうになる心を励まし、楠さんは今晩も「復興中」の木札をかける。

週刊新潮 2024年8月15・22日号掲載

ワイド特集「人生は夏の影法師」より

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