スコップしか持たないロシアの新兵に「ウクライナの精鋭旅団」が襲いかかった…プーチンの顔に泥を塗る「越境攻撃」が成功した最大の勝因とは

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テロ攻撃という嘘

 アメリカの大手通信社Bloombergも日本語電子版に8月16日、「ロシア兵が大量投降、戦争開始後で最多-ウクライナ軍の越境攻撃続く」との記事を配信した。クルスク州で《ロシア兵102人の投降を受け入れた》と伝え、ウクライナ軍の戦果を報じた。

 同じ日にCNN.co.jpも「ウクライナ軍、ロシアの82集落を制圧 司令部設置も」との記事を配信した。ウクライナ軍はクルスク州の町スジャを制圧し、ここに司令部を設置したという。

「ロシア軍が敗北を重ねた原因の一つとして、ロシア側の指揮統制に混乱が生じた可能性もあります。これまでロシアはウクライナと戦争状態にあると認めたことはありません。あくまでも“特別軍事作戦”を実行しており、ウクライナ側による越境攻撃は“テロ”と位置づけてきました。となると自国内に攻め入ったウクライナ軍を撃破するのはロシア連邦保安庁(FSB)という、ソ連国家保安委員会(KGB)を源泉に持つ諜報機関の役目になります。小規模の特殊部隊ならFSBでも対応できたかもしれませんが、3個旅団による本格侵攻を防戦できるはずもありません。ロシア軍が反撃するまで、ロシアの行政機構は相当な紆余曲折を経たのではないでしょうか」(同・軍事ジャーナリスト)

スコップだけのロシア兵

 プーチン大統領が詭弁を弄したしっぺ返しを受けたというわけだが、ロシア軍の装備や兵士の練度にも相当な問題があったようだ。時事通信は8月15日、「新兵頼み、ロシア弱点突かれる ウクライナ攻撃で捕虜数百人」との記事を配信した。

 記事はロシアの独立系メディアによる報道として、ウクライナ軍が奇襲攻撃を仕掛けてきた際、クルスク州にいた新兵の数百人は多くが行方不明か、捕虜になったと伝えた。

《兵役中の19歳の孫と電話連絡が取れなくなったという女性は「国境から約500メートルに張り付けられていた。武器も持たされず、スコップで戦えというのか」と憤りをあらわにした》

 ロシア軍の精鋭部隊はウクライナの東部戦線に振り向けられている。国内を守る兵士は練度の低い新兵が多く、武器も持っていない兵もいるようだ。

 軍事ジャーナリストは「実はクルスク州、第二次世界大戦で、『史上最大の戦車戦』と呼ばれたクルスク会戦が行われた場所としても知られているのです」と言う。

「劣勢のドイツ軍が戦局を挽回させようとソ連軍を攻撃した一大作戦で、両軍合わせて約6000両の戦車が参加しました。クルスク州は広大な平野部で、戦車を筆頭とする機械化部隊が最も得意とする地形です。ウクライナ軍にとって今回の越境攻撃は、初めて自分たちが主導権を握れる作戦でした」

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