会議中に「私のお母さんは……」、社外の人に「ウチの部長さんによれば……」 若者が使う“呼称”がどうにも気になる問題

国内 社会

  • ブックマーク

稲垣吾郎メンバー

 この呼称問題は他の分野でもときおり勃発している。特に顕著なのは芸能界とメディアの関係だ。メディアと普段から付き合いの深い芸能人・有名人が逮捕や書類送検をされた時に、珍妙な肩書が現れるのだ。本来は「〇〇容疑者」と報じるのがルールではあるのだが、ついメディアとしては「容疑者」とは言いづらい。「普段からお世話になっているし、微罪だし、書類送検されただけで逮捕はされていないからな……」というのが理由だ。

 その元祖ともいえそうなのが2001年の稲垣吾郎の道交法違反での現行犯逮捕である。この時、テレビ局はさすがに「稲垣吾郎さん」とは呼ばなかったものの、「容疑者」呼ばわりを避けるべく、妥協案として「稲垣吾郎メンバー」と報じた。その後もこの手の呼称は続き「布袋ギタリスト(布袋寅泰)」や「島田司会者(島田紳助)」「押尾俳優(押尾学)」「小泉タレント(小泉今日子)」などが登場した。

 このように呼称とは絶妙な人間関係を表す重要なものであり、冒頭の「お父さん・お母さん」も含め、ただの呼び方でしょ? 的には扱えないものなのである。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。