会議中に「私のお母さんは……」、社外の人に「ウチの部長さんによれば……」 若者が使う“呼称”がどうにも気になる問題

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希薄になった気恥ずかしさ

 今から25年ほど前、私は当時所属していたさる企業で、採用試験の面接官をやっていた。その企業では、受験生に対して事前にアンケートを配布していたのだが、その中の「尊敬する人は?」という項目に、「父」と回答する学生が少なからず存在し、驚いたことがある。というのも、私には父親を尊敬するという感覚はなく、さらにこうした質問には「松下幸之助」といった伝説的な経営者や、「徳川家康」など歴史上の偉人を挙げるのが常識であると思っていたのだ。自分の親について、仮に尊敬する面があったとしても、人様に向かってそう明言するのは気恥ずかしいものだという風潮が、少なくとも私が学生の頃には存在していた。

 それからさらに時が経ち、「親はなんとなく恥ずかしい」という風潮は、ますます希薄になっている。現在はなんと若者の間で「母親」の存在感が高まっているという。博報堂生活総合研究所の調査によると、「母親と共通の趣味がある」で「はい」と答えた人(19~22歳未婚男女)の割合は1994年は「はい」が29.9%で、2024年は50.7%に増加。男性は19.5%が41.6%に大幅増。女性は41.1%が60.0%となった。

 そして「尊敬する点が一番多い相手」は「父親」が46.4%から33.8%に減少。対して「母親」は28.4%から43.0%へと大躍進。私はこの事実にも驚きを隠せない。というのも、我々世代の感覚では、母親というのは父親以上に気恥ずかしい存在だったのだ。小学生時代、母親が授業参観や運動会に来るのを嫌がる者は多かったし、友人と帰宅中、路上で母親に会うのは恥ずかしく、その姿を確認したら回り道をするほどだった。友人の前では敢えて「ババア」などと悪く呼ぶ者もいた。

うちのお母さんは

 ありていに言ってしまえば時代は変わったというわけだが、そんな中、40代の中間管理職クラスの人間から聞いて目を見張った話がある。他者に対して親のことを話す際、「父は……」や「母が……」などと始めるのが40代以上の常識的な感覚(と思う)だが、最近は「お父さん」「お母さん」と呼ぶ人が増えているというのである。それだけ親が敬愛の念を抱かれているということなのだろうが、会議中でもこんな会話になるのだそう。さる出版社で、雑誌に掲載するタマネギを使ったレシピを考える編集会議でのことだ。

上司「タマネギって新タマネギと普通のタマネギがありますが、それにより作る料理も変わってきます。新タマネギ特有のホクホク感を活かしたレシピを作りたいですね」

若手編集者「うちのお母さんは北海道出身なので、よく新タマネギをコンソメスープに入れて柔らかく煮る料理を作ってくれましたがおいしいですよね」

 このように「お母さん」が自然と出てくる。当初はギョッとしていた中堅どころも「最近の若者はそう呼ぶんだろうな」と気にしなくなった。いずれは「パパ」「ママ」となる日が来るのかもしれない。いや「パパ活」という言葉があるからさすがにそれはないか。

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