一流企業に勤める「父親」の“過干渉”がトラブルの原因に…「中学受験で親子関係が破綻する」のはどんな家庭か

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 昨今、中学受験の過熱ぶりが伝えられ、首都圏で見ると、小学生が中学受験をする割合は2割を超えているという。ますます激しくなる受験の過度な競争の陰で親子関係のトラブルも頻発している。子を持つ親はどういう姿勢で中学受験に臨むべきなのか。『中学受験の落とし穴 受験する前に知っておきたいこと』(ちくま新書)を上梓した小児科医・文教大学教育学部教授で、子育て支援事業「子育て科学アクシス」の代表を務める成田奈緒子氏に訊いた。(前後編の前編)

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親子関係が壊れるきっかけ

 成田氏が主宰する「子育て科学アクシス」には子育て世代の親やその子から様々な相談が寄せられる。

「中学受験に関することでアクシスに相談に来るパターンとしては“中学受験前”と“中学受験後”の2パターンがあります」

 と、成田氏が語る。

「中学受験前のケースだと、子どもが通っている塾からのプレッシャーで親御さんも必死になってしまい、子どもに無理やり勉強をさせて、心身症状が出てしまう、ということが多いですね。親は自分の子を合格させるために、塾からの言葉を鵜呑みにしてしまい、1日10時間は勉強しなさい、と言ったり、夜の21時や22時に帰ってきた後も勉強をやらせたりする。さらに、自宅で学習するための課題がどっさり出て、塾によってはその課題が終わっていないと翌日の塾に来てはいけない、というところもあるようです。自宅学習は親の責任でやらせなくてはいけない状況になるので、子どもを強く叱咤して、結果、子どもの睡眠時間が短くなってイライラが募り、心身の症状が出てしまうのです」

 中学受験後の場合だと、

「苦労して入った中学が自分に合っていなかった、というケースですね。特に多いのが第一志望に落ちてしまって、第二志望以下の中学に進学し、その中学に馴染めないことを親のせいにするパターンです。結果、不登校になって親に暴力をふるうこともあります。受験前、受験後、いずれのケースも自律神経失調症状が見られ、親子関係が壊れるきっかけになっています」

“答えが合うまで何回もやり直せ”

 こうした相談は近年増える傾向にある。

「私は1998年にアメリカから帰国して、日本で小児科の外来を担当するようになりましたが、当時は中学受験に関連した心身症状で相談に来られる方はそれほど多くはありませんでした。ただ、この2、3年は体感として増えている印象があります。最近だと私立中学受験だけでなく国公立の中高一貫校への受験対策で疲弊してしまうことも。相談で多いのは大学を卒業されている高学歴親の家庭です。親の平均年齢も上がっていて、小学校5、6年生の親だと40代前半が多かったのに、最近は40代後半、50代ということもあります。30代後半、40代での出産が増えた結果、何が起きたかというと、一人っ子の家庭が多くなり、その子に高い教育費をかけられるようになった。そのため、“子育てを失敗できない”と語る方が増えているのです」

 そこで起きるのが、「親の過干渉」だ。

「親が良かれと思って、幼少期から塾や習い事を7つも8つもやらせる。子どもの才能を伸ばしてあげよう、とか親がなしえなかった自己実現を子に託そう、といった考えは昔からあるのですが、中学受験に臨む社会的地位の高い親が増えてきて、その傾向がより顕著になってきていると感じます」

 共働き家庭が増えたことによる変化もある。

「かつては、大学を卒業した女性でも結婚を機に家庭に入り、“専業主婦”として子どもの勉強に過干渉し、トラブルが起きるケースがありました。最近は女性が結婚後も仕事を辞めないことが増えたので、父親が子どもの教育に関わるようになってきています。父親の過干渉は母親とは違うアプローチで行われます。社会的に成功している父親の場合、長く部活動をされて、一流企業に入る方もいるので、部活感覚で“根性”を重視する。“答えが合うまで何回もやり直せ”と小学校3年生、4年生でも怒鳴って、夜中の2時まで泣かせながら子どもに勉強をやらせる、なんてこともあるのです」

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