「品性下劣もほどがある…」後輩夫婦まで巻き込んだ妻の復讐不倫 すべては25年前の「結婚パーティー」が始まりだった
悩む瑠璃さんにも、妻は…
そんなとき瑠璃さんから春喜さんに連絡があった。
「相談がある、と。会ってみると、夫の様子がおかしい。浮気しているんじゃないかと思うというんです。まだ新婚じゃないかと言ったんですが、『春喜さんから夫にそれとなく聞いてみてもらえませんか』と瑠璃さんが涙ぐんでいる。その浮気相手は一回り年上のうちの妻なんだよなんて言えないですよ。私が25年前におかした罪と、今、妻がしていることとどちらが罪深いのか……。帰宅してから、妻には瑠璃さんのことを話しました。25年前のことは謝る。だけどあのときの彼女は独身だった。きみは、オレたちがかわいがってきた夫婦を裂こうとしているんだよ、そのことをどう思っているんだ、と。それでも妻は、自分が悪いと思っていないような様子でした。長い年月、妻をここまで追い込んだのは私なんでしょう。そう思っても、なんだか理不尽が過ぎる。そんな気がしました」
吉田さんに直接、声をかけることはできなかった。妻に、吉田と別れてほしいと言ってもきちんとした返事は返ってこない。
「だんだん腹が立ってきて、だいたいいい年して浮気だなんだとみっともないと言ってしまったんですよね。それは妻をいたく傷つけたみたいです」
妻は目を見開いて春喜さんを見つめ、「女はね、灰になるまで女なの。それさえわかっていないのね」と冷たく言い放った。長く妻とレス状態になっている春喜さんは、ぎくりとした。四半世紀前の復讐だけではなく、夫婦としての生活にも妻は不満をもっていたと容易に想像できたからだ。
「それにしても、すべてが今さら、という思いでいっぱいです。ふたりの子を育てて円満な家庭だったと思っていたのに。私からすれば妻からひどい裏切りにあったようで」
春喜さんの「品性下劣にもほどがある」に対し、千香子さんは
このままだと罪もない瑠璃さんだけが傷つくことになる。それだけは避けたいと思っているところに、瑠璃さんから妊娠したという報せを受けた。これで吉田さんと妻は別れるのではないかと考えていたが、妻は「瑠璃ちゃん、妊娠したみたいね」とつぶやき、ニヤリと笑った。
「品性下劣にもほどがあると思わず言うと、妻は『あなたもね。そういう夫と別れられなかったのが私の人生の最大の後悔だわ』と。だったら今からでもいい、離婚しようと言いました。すると妻はキラリと目を光らせて、離婚はしない、と。私が苦しんだ25年間を、あなたはこれから苦しみ続けてちょうだいって。心から怖いと思いました」
こうなったら吉田さんに直訴するしかない。昨年異動になって、別のフロアにいる吉田さんにLINEで飲みに行こうと誘った。
「オレは別に怒っているわけじゃない。妻が瑠璃さんを苦しめていると思うと、つらくてたまらないだけ。きみもいいかげん火遊びはやめておいたほうがいいと静かに言いました。すると吉田は、『申し訳ありませんでした。ただ、実は僕も困っているんです』と。美香子の誘いが激しく、断ると会社に言う、そうなるとあなたも夫も共倒れになるけどいいのねと脅されていると。妻は壊れてしまったんだろうかと心配になりました」
吉田に会ったよと妻に告げたが、妻は右から左に受け流した。実際のところ、吉田さんと美香子さんの関係がどうなっているのか、春喜さんは実態がつかめていない。少なくとも吉田さんは離婚する気はない。むしろ、美香子さんと別れたがっているのではないかと春喜さんは読んでいるが、証拠はないし、妻はときどき帰宅が午前零時を回る。
「家事もほとんどしなくなりました。私は弁当や惣菜を買って帰ってひとりで食べています。子どもたちに話すわけにもいかない。この年で非常に孤独な気持ちに陥っています。家族がいるのに何も言えない、心も通い合わない。そこまで悪いことをしたんだろうか。そんな気持ちでいます」
そして自分たちの老後はどうなるのだろうとも考える。定年にはまだ間があるし、最低でも65歳までは働くつもりだが、妻が病気になっても思いやりをもって看護することができる自信はない。自分が病気になったとしても、妻から親身に心配してもらえるとは思えない。それならやはりいっそ離婚したほうがいいと気持ちが傾くが、妻はその気はないらしい。
「人生、行き詰まった。そう思います。もしかしたら妻は、吉田をカモフラージュにして別の男ともつきあっているのかもしれない。自分の妻がそんなにモテるとは思っていないけど、たで食う虫も好き好きと言いますからね。ずっと我慢してまじめに生きてきたからこそ、今になって箍が外れておかしくなっているとしか思えないんです」
妻がどういう状況であれ、会社員である彼は淡々と出社するしかない。今年に入ってから、一度も笑っていない気がする。ずっと心に鉛が入っているようだと、彼は大きなため息をついた。
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四半世紀をかけての美香子さんの復讐劇――その端緒となった春喜さんの「若き日のあやまち」は【前編】で紹介している。
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