26年目の結婚記念日に「浮気したのよ、私」と妻が告白 混乱する55歳夫が忘れていた「あの日」の記憶

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結婚祝いのパーティーに…

 婚姻届を出してから2ヶ月後には女の子が産まれ、ようやく会社にも報告した。直属の上司と人事部だけにとどめておいてほしいと懇願したが、いつしか春喜さんと美香子さんが結婚した話は社内に知れ渡った。人の口に戸は立てられない。

「産後、半年ほどたったころ、美香子の友人たちが子どもを見たいと言っていると聞き、じゃあ、少人数を招いてパーティをしようということになったんです。私の母方の伯父が不動産業なので、比較的広いマンションを安く借りることができていた。テラスも広いので10数人なら呼べる。当日は入れ替わり立ち替わり、いろいろな人が来てくれました。私たちの学生時代の友人や、勤務先の先輩や同僚たちも」

 夕方から始まったパーティは延々続き、夜遅くまで友人たちが残っていた。美香子さんは娘の世話をするためにたびたび中座したが、それでも楽しそうだった。

「ふと気づいたら、例の先輩女性がいたんですよ。『おーい、いつの間にか結婚しやがって』と彼女はウインクして見せました。ドキッとしましたね。いつ来たのかわからなかった。彼女と私の関係は誰も知りませんから、『先輩、来てたんですね』と周りもワイワイ騒いでいました。彼女は高価なワインを持ってきて、みんなにふるまっている。『本当におめでたいわよね』と彼女の声も高くなっていた。とにかく恐怖感が先に立ってそばに行くと、『私は、あなたが恐れているほどバカなことはしないわよ』とニヤッと笑ったんです」

 考えてみれば彼女は「仕事が恋人」と公言している女性。周りからも会社からも大きな期待をかけられている人物だ。仕事や社会的名誉を放り出すとは思えない。何を恐れていたんだろうと彼は思った。

「その晩は遅くまで彼女を含め、数人が残って、最後は男ふたりくらい泊まったんじゃなかったかな。翌日は休みだったんですが、美香子が朝食を作ってくれて、残っていたふたりはおいしいおいしいと食べて帰りました」

 確か美香子さんには何もさせず、自分がすべて後片付けをしたはずだと春喜さんは言った。

浮気したのよ、私

 結婚生活は山あり谷ありだったが、経済的に苦労させたことはなかったと春喜さんは言う。2年後に息子も産まれ、家族4人、概ね仲良く暮らしてきた。

「妻にイラッとさせられるようなことも、ほとんどなかった気がします。よくできた妻で、私が会社で嫌なことがあって、それでも家庭にその気持ちを持ち帰るわけにはいかないから気持ちを切り替えて帰宅するとするでしょう。普段通り、お帰りと迎えてくれて、食事も終わってくつろいでいると『大丈夫? 何かあった?』とさりげなく声をかけてくるんです。いや、何もないよとたいていは答えますが、ときには仕事でのトラブルについて愚痴を言ったこともあります。美香子は相づちをうちながら聞いて、『あなたは悪くない』『いつか周りもわかってくれるよ』と真剣に言ってくれるんです。あなたなら大丈夫。いつもそう言っていた。心から私を信じていることがわかってうれしかった」

 それなのに……と春喜さんはため息をつく。2年前に娘が就職し、息子は数年前、どうしてもやりたいことがあると遠方の大学に進学した。子どもたちに手がかからなくなり、これからは夫婦でのんびり、楽しく過ごそうと思っていたのだが、今年の初めころ、どこか美香子さんの様子が変だった。

「何か言いたそうな、でも言えないというような。言いたいことを黙っているタイプではないと私は思っていたので、結婚記念日に『何かあったの?』と声をかけました。すると美香子は『あなた、私が変だと思わない?』と。思うから聞いてるんだけどと言うと、『浮気したのよ、私。どう思う?』って。どう思うと言われても……ちょっと噴き出しちゃったんですよ。なんとも滑稽じゃないですか、疑われてもいないのに自ら浮気したなんて、普通は言わないでしょう」

 すると美香子さんは「もういい」と話を打ち切った。胸騒ぎがした春喜さんは、いったいどういうことなんだとしつこく聞いた。しつこく聞くべきだと感じたからだ。

「妻が言ったんです。四半世紀たって、ようやく復讐ができた気持ちになっているのと。どういうことかと尋ねると、妻から衝撃的な話を聞きました。しかも私は最初、そのことをまったく覚えていなかった」

 ***

 春喜さんが聞いた話とは、そしてその後の夫婦関係はどうなったのか――【後編】で美香子さんの不倫劇の全容を紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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