「瑠奈被告の奇行を“盛る”ことくらい想定内」 ススキノ首切り事件、弁護側の“虚偽主張”は「減刑」狙いの可能性

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 発生から1年以上がたった札幌頭部切断殺人事件。遺体をもてあそんだ田村瑠奈被告(30)の狂気の沙汰が詳(つまび)らかにされる一方で、殺害の動機はいまだ判然としない。本誌(「週刊新潮」)の取材でも弁護側の陳述内容に「虚偽」が確認されており、いよいよ謎は深まるばかりである……。

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「私は奴隷です」

 昨年7月、札幌ススキノのホテルで男性会社員(享年62)が殺害され、頭部を切断された。この事件では主犯の瑠奈被告に従属する罪で、父親の修被告(60)と母親の浩子被告(61)もそろって起訴されている。

「最初の公判が開かれたのは6月4日でした。瑠奈被告の死体遺棄・損壊をほう助した罪に問われている浩子被告の公判が、他の二人に先駆けて始まったのです。冒頭陳述では検察側と弁護側の双方から、瑠奈被告が被害男性の頭部を自宅に持ち帰り、眼球をくりぬくなど凄惨の限りを尽くし、その様子を修被告に撮影させていたことが明かされました」(社会部記者)

 衝撃的だったのは瑠奈被告の残虐行為だけでなく、

「三人の歪(いびつ)な家族関係も異様でした。両親は瑠奈被告の奇行に振り回され、支配されていたようです。検察側の陳述によれば、浩子被告は娘の指示で“私は奴隷です”などの文言を紙に書かされ、それをリビングに誓約書として掲示していたのだとか」(同)

 一方の弁護側が述べている驚愕(きょうがく)の内容は、

「瑠奈被告が18歳ごろから、本当の自分は死に、体には複数の人物の魂が入り込んだ状態であるという妄想にとらわれてきたことです。両親はそんな娘を名前でなく、“お嬢さん”と呼んでいた。余計な言葉で彼女がかんしゃくを起こさないように、細心の注意を払っていたというのです」(同)

 この観念については、7月1日に開かれた浩子被告の2回目の公判で証人として出廷した修被告が“ゾンビ妄想”と呼んだ。彼は娘がこれに取りつかれて以降、彼女の精神をさらに追い詰めてしまってはいけないと考えたようだ。よって、事件前はもちろん、発生した後も、頭部を持ち帰ってきた瑠奈被告をとがめることができなかったという。

減刑を勝ち取るための“戦術”

 現在、瑠奈被告の奇行に関する陳述内容の量は弁護側のほうが多い。その中には重要だと思しき点における虚偽も見受けられる。

 彼女は引きこもり状態になった18歳ごろから両親と一緒でなければ外出できず、友人がいなかったというのだが、本誌の取材によればそんなことはなかった。昨年8月10日号でも取り上げたが、彼女は自宅の最寄り駅近くにある居酒屋を複数回、同年代の女性たちと訪れていたようなのだ。

 それらは全て事件が起きた年とその前年の出来事で、彼女自身が「田村」の名前で予約してきたという。

 今回、改めて居酒屋の店主に尋ねてみると、

「ウチに来ていたのは、あの子(瑠奈被告)で間違いありません。『アジのレアカツ』を出したら“火が通っていない”と言うので、“新鮮なので生でもいけますよ。食べてみてください”と返したのですが、それでも“火を入れてください”と。おかしな客だったのを覚えています。両親が二人で来たこともありました」

 なぜ、浩子被告の弁護団は虚偽を述べ立てるのか。事件に詳しいさるジャーナリストの見解はこうだ。

「この先、瑠奈被告の弁護団は彼女が心神耗弱などで責任能力が低下していたとして、減刑を求める可能性が考えられます。また、浩子被告の弁護団は瑠奈側と連携しており、すでに先を見据えています。減刑を勝ち取るために今から瑠奈被告の奇行を“盛る”ことくらい、想定内の法廷戦術だといえるでしょう」

週刊新潮 2024年8月15・22日号掲載

ワイド特集「人生は夏の影法師」より

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