松本まりか「夫の家庭を壊すまで」に見た「不倫あるある」と「ないない」

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 復讐に燃える「サレ妻」を描いたドラマ『夫の家庭を壊すまで』(テレビ東京系)が話題となっている。男女問題を30年近く取材し『不倫の恋で苦しむ男たち』などの著作があるライターの亀山早苗氏は、この作品をどう観たのか。

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 同作は、放映初回から松本まりかの怪演(?)が評判となっていた。夫に「もうひとつの家庭」があると知ったとき、妻はどうするのか。1話目から話はトントン進んだ。

 主人公の如月みのり(松本)は、高校時代に一目会ったときから心を震わせ、生涯たったひとりの人と決めた相手を愛し抜き、10年後に結婚。7年が経ち、いまでは幼い息子もいて、毎日が幸せで充実している。

 その夫・勇大(竹財輝之助)は、仕事もできて部下からの信頼も絶大、誰からも羨ましがられる存在だ。

 だがある朝、夫が忘れていった携帯を届けようと手にしたときに、届いたメッセージを目にしてしまう。そこから疑念を抱き尾行すると、夫は会社帰りに高校生の男の子と合流し、宝飾店に寄ったあと、レストランで「どこかで見たことのある女」と待ち合わせしていた。食事が終わると3人は肩を寄せ合い、とあるマンションへと消えていった……。

 勇大が毎週火曜日には遅くなること、息子にあまり関心を寄せないように感じられたことなどが符合し、疑惑は、あっけなく現実として浮かび上がってきた。夫はもうひとつの家庭を持っていたのだ。

 みのりは夫の携帯を調べる。「生涯でたったひとり、愛を捧げる相手」である夫は、別の女性にもその笑顔を向けていた。高校生の男の子が小さいころからの写真、そして一緒に映っている女と夫。

 みのりは高校時代の勇大の後輩だが、写真に映る相手は、勇大と同級生の理子だとわかった。みのりの心は一瞬にして壊れる。写真をスクロールし、絶望的に笑い転げながら慟哭し、自分たち3人家族の写真にフォークを突き立てるその目は据わっていた。夫の嫌いなインゲンをまな板の上でぶった切るときには、あたかも夫の体に包丁を突き刺すような迫力があった。初回の放送は、あまりにも衝撃的だった。

不倫の成り立ちは「無理なく自然」

 みのりは夫の携帯電話から不倫を察知するのだが、携帯が世の中に出回るようになって以来、ふたりだけの連絡網ができたため不倫がしやすくなったのも事実だし、それゆえ発覚しやすくなったのも事実である。今も不倫発覚のいちばんのツールは携帯だ。スマホが普及してからはロックがかかるから盗み見しにくくなったとも言われるが、設定次第では受信してすぐなら画面にメッセージの内容が出ることもある。勇大のスマホもそういう設定だったのだろう。

 パスワードはだいたい家族の誕生日だったり、本人にゆかりのある番号だったりする。指紋認証の場合も、寝静まったところで夫の指を使ってロックを解除することが多い。「その気になれば携帯ロックなんて簡単だし、徹底的に携帯を分析する」という妻たちも少なくない。

 また、男性たちは一般的に「脇が甘い」。勇大のように不倫相手と撮った写真を携帯に残していることも珍しくない。同じ女性との写真が何枚もあれば、見られたとき真っ先に疑われるに決まっているのに「一緒に写真撮りたい」と言われたら断れないのが男の甘さなのかもしれない。一方、女性が不倫をしたときは,もう少し緻密である。「携帯を見られるようなヘマはしない」と断言する女性たちの声をこれまで多く聞いてきた。

 勇大の不倫相手は高校時代の同級生の理子だ。理子は学生時代に子どもを産んだことになっているが、勇大とどこでどうやって再会したのかはまだ明らかになっていない。一時期、流行した「同級生不倫」は、今も変わっていないようだ。同窓会やSNSでの再会は誰にとっても懐かしいのだが、旧交を温めると同時に新たな恋が勃発するのもよくあること。まして勇大のケースのように相手がシングルマザーで苦労しているとなれば、「見捨てておけない」と侠気を発揮してしまうのも、男性にはよくある不倫の馴れそめである。このドラマ、不倫の成り立ちに関しては無理なく自然に流れているという気がしてならない。

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