甲子園初出場で花咲徳栄に勝利!「新潟産大付」が全国のチームに与えた勇気 プロ注目選手がいなくても互角に戦えた理由とは

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打って守っての大活躍

 さらに、勝利を手繰り寄せたのは、相手打線をわずか1点に抑え込んだことだ。花咲徳栄は、埼玉大会の7試合で63得点をあげた強力打線だ。

 これを7安打、1失点に抑えた新潟産大付投手陣の健闘が光った。彼らを好リードした、捕手の堀田温斗(3年)は、以下のように話す。

「どんなバッターがいて、どこへの打球が多いかなどを(埼玉大会の)動画を見て研究して、配球を考えました。特に気をつけていたのは、(4番の)石塚選手と、(3番の)生田目(奏)選手です。石塚選手には(先発の)宮田が意識し過ぎてしまってか、最初の打席では少し甘く入って打たれてしまいましたが、その後(の打席)は、狙い通り抑えられたと思います。(2番手の)田中は、少しナチュラルにストレートがシュートして、まっすぐ来ない特徴があります。それを考えて、低めでゴロを打たせようと考えていた。その通りに投げてくれました」

 堀田には、もうひとつ“ビッグプレー”があった。0対1で迎えた5回裏、ツーアウト一・三塁の場面だ。

 花咲徳栄は、一塁走者がスタートを切り、捕手の送球の間に三塁走者があわよくば、ホームを狙うプレーを見せてきた。それに対して、堀田は、見事な二塁送球でアウトにして、大きなピンチを凌いだ。ここで、新潟産大付が追加点を奪われていれば、かなり苦しい展開となったはずだ。

塁上での好プレーも勝利を後押し

 一方、攻撃面では、機動力が威力を発揮する。

 チーム一の俊足で、トップバッターの戸嶋翔人(3年)が、3度出塁して、2度盗塁に成功した。

 7回、先頭打者の戸嶋は、ライトにヒットを放ち、すかさず二塁へ盗塁。その後、ツーアウト三塁から4番の多田大樹(3年)がレフトに勝ち越しタイムリー。これが決勝点となる。戸嶋以外の選手も、塁に出ると、常にスタートを切るような仕草を見せて、相手バッテリーに揺さぶりをかけていた。

 新潟産大付は、8月14日に行われた2回戦で、京都国際(京都)に0対4で敗れたが、6回までは相手打線を無失点に抑えて、全国レベルの強豪校を相手に最後まで接戦を演じている。

 プロが注目するようなレベルが高い選手がいなくても、夏の甲子園で互角に勝負できる―そんな“勇気”を全国のチームに与えた新潟産大付の戦いぶりだった。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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