「ユリ・ゲラー」テレビ初出演から50年…矢追純一氏が語った「特番の舞台裏」と「超能力ブーム」

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“超能力者”ユリ・ゲラーが昨年、「裸の宇宙人で女性」「おそらく本物」と称する画像をSNSに投稿して話題を呼んだ。スプーン曲げといった彼の能力はその真贋が議論の的になったが、今年77歳を迎えてもなおオカルト界の有名人である。1974年、そんな彼を初めて日本のお茶の間に登場させたのは、当時、日本テレビのディレクターだった矢追純一氏だ。

 満州で終戦を迎えた矢追氏は、突然路頭に迷うという少年時代の苦難により「世界はもっと複雑で、不確かなもの」といった価値観を得るに至った。既存の理屈では説明しきれないパフォーマンスを行うユリ・ゲラーとの出会いは、ある種の必然だったのかもしれない。日本はなぜユリ・ゲラーと超能力に熱狂したのか。矢追氏のコメントを交えつつ、その謎を追った。

(全2回の第1回・「新潮45」2009年9月号掲載「シリーズ『昭和』4の謎に挑む5 なぜ人々はユリ・ゲラーに熱狂したのか ◆昭和49年」をもとに再構成しました。文中の年齢、役職、年代表記等は執筆当時のものです。文中敬称略)

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日本中に大変なことを起こしてみせる

 その番組は、司会の三木鮎郎のこんな言葉で始まった。

「テレビの前にお集まりの皆さん、今夜は現代最高の超能力者、今やアメリカをはじめヨーロッパ各地でも、最大の話題を巻き起こしている、念力男ユリ・ゲラーの驚くべき超能力の数々をご覧いただきます。どうかいますぐ、あなたの家族、恋人、お友だちに連絡してあげてください。そしてこの現代の奇跡とでもいうべき、すばらしいビッグイベントを、どうぞお見逃しなきように」

 時は昭和49(1974)年3月7日。番組タイトルは「驚異の超能力!! 世紀の念力男ユリ・ゲラーが奇跡を起こす!」。日本テレビの「木曜スペシャル」、ディレクターは矢追純一である。

 三木鮎郎はさらにこう続けた。

「ユリ・ゲラーはきょう現在、カナダにいるのですが、この番組の放送中に、遠くカナダからこの日本に念力を送って日本中に大変なことを起こしてみせると予告しております。その時間は8時35分。いまから1時間ちょっとですね。いったいなにが起こるのでしょうか、ご期待ください」

 ユリ・ゲラーは、この日に先立つ2月24日に日本テレビのスタジオで収録を終えており、その日の番組は、その放映とスタジオからの生放送という構成で進行した。

 彼は、壊れた時計や、使わないフォークやナイフ、スプーンなどを、テレビの前に持って来てほしいというメッセージを残していた。カナダから念力を送る夜8時35分、その壊れた時計は動き出し、フォークやスプーンが曲がるというのだ。

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