甲子園の“判官贔屓”は今年も…金足農のミラクルを期待する「異様な空気」 “アウェー”となった西日本短大付の監督は何を感じたか?

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観客の気まぐれが生み出す異様な空気

 面白い試合が見たい。大反撃、逆転、サヨナラ劇。

 そんな、ちょっとした気まぐれな観客の思いが、時に膨れ上がり、期せずして一方のチームに“想定外のアウェー感”を生むことがあるのだ。
 
 ちなみに、東邦―八戸学院光星戦の後に、タオル回しによる応援の自粛が呼びかけられたこともあり、球場中が“同じ色”で揺れる異様ともいえるような光景は見られなくはなっている。

「やっぱり甲子園って、いいチームに対する応援というか、そういう流れがある。金足農さんは、やっぱり素晴らしい、人気のあるチームですからね。その中で逃げ切れたことは非常に大きいですし、私たちもこんなチームを目指したいと思っています。これから試合を重ねるごとに、そういう風なチームにしていきたいな、と。そんな気持ちで見ていました」

 西村監督は、目指すべき「理想像」を、金足農への“後押し”に見たのだという。その“前向きな教訓”を得られる勝利で終わったことは、西短付には救いでもあった。

 積み重ねた歴史の重み。そして、負ければ終わりという、その一発勝負の醍醐味。これが甲子園という舞台の中で、さらに強い魅力を発するのだろう。それが、思いも寄らぬドラマを生み出す。ここに、ファンは引かれる。
 
 ただ、それも甲子園の「怖さ」なのかもしれない―。

喜瀬雅則(きせ・まさのり)
1967年、神戸市生まれ。スポーツライター。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当として阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の各担当を歴任。産経夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。産経新聞社退社後の2017年8月からは、業務委託契約を結ぶ西日本新聞社を中心にプロ野球界の取材を続けている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)、「不登校からメジャーへ」(光文社新書)、「稼ぐ!プロ野球」(PHPビジネス新書)、「ホークス3軍はなぜ成功したのか」、「オリックスはなぜ優勝できたのか 苦闘と変革の25年」、「阪神タイガースはなんで優勝でけへんのや?」、「中日ドラゴンズが優勝できなくても愛される理由」(以上いずれも光文社新書)

デイリー新潮編集部

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