「金正男暗殺」実行犯の女性2人の知られざる「現在の暮らし」 「SNSの更新もストップし、表立った活動は…」

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本当にドッキリだと思っていた可能性

 2人の女性はここから数カ月にわたって「日本で放送するイタズラ動画の撮影」という名目で、見ず知らずの他人の体にベビーオイルをつけたり、後ろから目隠しをしたりする「ドッキリ」を繰り返すことになる。

「確かに、 結果的には全てが金正男の顔にVXを塗布する“訓練”になっていたわけですが、彼女らはその様子も全てSNSで発信していた。これから暗殺をしようとする者が不用意に自らの手の内を明かすことは考えにくく、『イタズラ動画で有名になれる』と信じて指示に従っていたと考えるのが自然です。しかし、自国の玄関口でやすやすと要人暗殺を遂げられたマレーシア当局には、せめて実行役だけでも有罪にしてメンツを保たなければという焦りがあった」

 結果、検察側の立証が終わった段階で、裁判所から2人の女性に申し渡された“心証”は、「イタズラ動画の撮影には見えず、暗殺の訓練だったと考えるのが自然」、つまり有罪相当というものだった。

 当時のマレーシアの法律では、殺人罪の法定刑は死刑のみ。被告人である彼女らが検察側の主張を覆せなければ、有無を言わさず死刑が宣告される絶体絶命の立場に置かれたのである。

SNSの更新もストップ

 ところが、ここから事態は誰も予想しなかった展開をたどる。

「二人が拘束されてから2年余りが経過した19年3月、検察が突如、シティに対する起訴のみ取り下げると申し出たのです。背景にはインドネシア政府によるマレーシア当局に対する自国民の釈放要請がありました。これにより、シティは即日釈放。母国の政治力の低さによって一人容疑者として取り残されたドアンは打ちひしがれましたが、結局、ドアンについても政府間交渉により軽い傷害罪に訴因が変更され、19年5月に出所となったのです」

 女優を志していたものの、貧困がもとで大きく道を踏み外したドアンとシティ。現在はどのような暮らしをしているのだろうか。

「ドアンもシティも釈放後は家族に迎えられましたが、その後の動静については、地元メディアで取り上げられることもなく、あれだけ頻繁に更新していたSNSの投稿すら確認できなくなってしまいました」

「新たな証拠が見つかれば…」

 ドアンは帰国時に「これから何がしたいか」と記者に尋ねられ「演技がしたい」と笑顔で答えていたが、帰国後はネット上でバッシングが起こり、誹謗中傷の嵐にさらされたのだという。

 起訴を取り下げられたシティも一件落着とはいかなかったようで、

「釈放後、インドネシア外務省が『完全な釈放ではなく、新たな証拠が見つかれば、再び起訴される可能性がある』としており、彼女も表立った活動は控えるつもりなのかもしれません」

 これぞ翻弄された人生と言うしかあるまい。

週刊新潮 2024年8月15・22日号掲載

特別読物「これぞ世界仰天ニュース 国際版『あの人は今』」より

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