高校野球「7回制」は本当に導入されるのか…「二部制」、「他球場での開催」は課題山積

スポーツ 野球

  • ブックマーク

甲子園球場以外で開催?

 ところで、今夏から本格化した「暑さ対策」は、朝夕の二部制の導入で終わりではなく、さらなる改革案が今も検討されていることが分かった。高野連は甲子園球場以外で全国大会を行うことも“協議”していたというのだ。

 前出の高野連スタッフは「結論ありきでない」と強く前置きした上で、こう説明する。

「恐れているのは、日程の問題です。3回戦2日目、準々決勝、準決勝の翌日には休養日を設けていますが、雨天中止となる日があれば、休養日を設けられません。こちらも投手の投球過多などを防ぐためですが、甲子園だけでなく他の球場に試合を分散する方法もあるのではないかという意見もありました」

 高野連の宝馨会長(67)は今夏大会前、デイリースポーツ(8月1日付)の単独インタビューの中で、ファンの間でも懸念されている「7回制」の導入案について、

「5回や7回で試合が打ち切られるのは残念という声は多い。応援団も地方から大勢やって来る。7点くらいの点差なら、ひっくり返す試合も結構ある」

 との持論を述べた後、「検討は始めている」と、7回制導入を話し合っていることを認めた。だが、「やっぱり野球は9回までという考えはある。8回、9回のドラマはあるので」と、“現場”をあずかる各校の監督から出ている「野球は8、9回」の意見に同調していた。さらに、「甲子園球場以外で試合はできないか」という質問にはこう答えている。

「やはり甲子園を目指してみんなやっているので、甲子園でやるのがベストだと考えている。初戦は絶対に甲子園でやらせてあげたい。2回戦、3回戦を他の球場でやって、準決勝、決勝を甲子園でやるという工夫はあり得るかなと思う」

 この、「2回戦、3回戦を他の球場でやって」というのがポイントだ。宝会長の言う通り、初戦を甲子園で行えば、「甲子園大会に出場したい」とする球児の夢、目標を奪ったことにならない。2回戦、3回戦を行う球場名は明かしていないが、仮に近隣の「京セラドーム大阪」が使えるのなら、日程問題と暑さ対策の両方の問題が解決される。

「7回制」の導入案も衝撃的だったが、球児の夢を奪わない「他の球場」案のほうが反発も小さいのではないだろうか。「7回制」について、大阪桐蔭の西谷浩一監督は合同会見で「私個人としては9回やってほしい。野球は9回だと思う。現場の声も聞いていただきたいなと思います」と答えていた。

「7回制について検討するワーキングチームができ、現場の指導者たちは近い将来の導入を覚悟しているような雰囲気です。朝と夕方に分けた二部制も課題を残しました。今大会の初ナイターとなった1日目の第3試合(智弁学園対岐阜城北)は、両チーム合わせて10個のエラーがカウントされました。開会式の後、両チームともいったん宿舎ホテルに戻り、午後になってまた甲子園を訪れました。智弁学園の小坂将商監督が会見で話したところでは、球児たちは開会式に出るため、午前5時に起きて宿舎に戻った後に仮眠を取り、午後になってから準備を始めたそうです。長い一日となって、集中力を持続させるのも大変だったようです」(地元メディア関係者)

 高校生にナイトゲームを強いるのが難しいとなれば、7回制や「他球場への分散案」の導入案が加速していくのは必至だ。

ドーム球場をタダで借りられるのか

 こうした高野連の喧騒を予想していたのか、甲子園球場を所有・管理運営している阪神電鉄が去る8月2日に会見を開いている。タイガースの元取締役オーナー代行で、現在は阪神電鉄取締役スポーツ・エンタテインメント事業本部長である谷本修氏は「甲子園(球場)はこれからも高校野球とともにあります」と発言し、内野席の一部を覆っていた銀傘をアルプススタンドまで拡張する改修工事の計画を説明した。

「着工は今年11月。28年3月の竣工を予定しています。直射日光と雨を遮る銀傘を、アルプススタンドのほうにも新たに設け、地上6階建ての建物も新設し、応援団の待機場所にも使えるようにするそうです。工事費は約150億円が投じられます」(在阪記者)

 この発表会見に同席した高野連の宝会長も、「暑さ対策、雨天時の雨の対策にもなり、有意義な素晴らしい計画」と頭を下げていた。しかし、宝会長の「2回戦、3回戦を他の球場で」の一案が報じられたのはその前日のこと。高野連と長くパートナーシップを築いてきた阪神電鉄も他球場での開催案をすでに知っていたと見るべきだろう。銀傘の拡大工事には阪神電鉄の「甲子園球場だけで開催してほしい」との思いも込めていたのかもしれない。

「センバツ、夏の大会ともに、高野連は無償で甲子園球場を借りています。NHKからもテレビ放映料をもらっていません。暑さ対策で他の球場も使用する案が出るのは仕方ないとしても、甲子園球場と同じ条件で借りられるのかどうか分かりません」(前出・関東圏の高野連スタッフ)

 他球場も借りられない、ナイトゲームも不評となれば、試合時間を短縮させる7回制の導入が濃厚となる。高野連の改革は「道半ば」と言ったところか。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。