「あの倒れ方はやはりおかしい」 能登半島地震「五島屋ビル」が今も撤去されない理由【スクープその後】
「そりゃ立ち直れないですよ」
正直な思いを打ち明ける楠氏。もちろん彼の中で震災はまだ終わっていない。
「店と家と、何より家族を失った。俺は目の前にまだ生きている二人がいてそれを助けてあげられなかった。そりゃ立ち直れないですよ。一生引きずって生きていくと思います。女房と築き上げた店を終わらせたくないから、いつかはあの地で店を再開したいと思っているけど、地元には客が戻っていない。まだまだその日は遠いですね……」
多くの人々の日常をかくも一瞬で奪い去っていった震災。倒壊した五島屋ビルが姿を消すのはいつの日か。
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現在「わじまんま」は神奈川県川崎市に移転し、輪島の地元料理や地酒を提供する居酒屋として繁盛しているという。楠さんは今後ビル倒壊の理由と責任の所在を明らかにするために現地のボーリング調査をする予定だと、週刊新潮の取材に語っている。その費用を捻出するためにも「一生懸命稼がなくてはいけないんです」と胸のうちを明かしてくれた楠さん。ともすれば折れそうになる心を励まし、楠さんは今日も店に立ち続けている。