「あの倒れ方はやはりおかしい」 能登半島地震「五島屋ビル」が今も撤去されない理由【スクープその後】
能登半島地震から7カ月以上がたつが、復興はいまだ緒に就いたばかりだ。何しろ、負の象徴ともいえる「五島屋ビル」も撤去されずに巨体を横たえたまま。その理由とは……。さらに、ビルにつぶされてしまった居酒屋「わじまんま」の店主は「自力で調査する」と、ビル倒壊の理由と責任を明らかにしていくことを語った。(以下、「週刊新潮」2024年5月2・9日号をもとに加筆・修正しました。日付や年齢、肩書などは当時のまま)
【写真を見る】不自然な倒れ方をした五島屋ビル 現在も撤去されていない
復興どころか復旧もまだ――。今の輪島市にはそう言わざるをえない光景が広がっている。潰れた家屋の多くはそのままの姿で、大火災に見舞われた朝市には焼け跡が広がるだけ。道路には凸凹が変わらず残り、1500戸弱が断水状態。
市は、倒壊家屋の公費による撤去作業を進めている。総務課によれば、
「全壊と半壊の家屋に関しては、申請があれば、業者を市が手配し、全額市の負担で撤去しています」
撤去が進まない理由
しかし、例えば、メディアに散々取り上げられてきたあの「五島屋ビル」は4カ月間、倒壊したままの状態である。
輪島塗の老舗企業が入った築50年、7階建てのこのビルは震度6強の揺れに耐えきれずに根元から倒れ、隣にあった居酒屋を潰してしまった。店主の妻と19歳の娘の二人が亡くなるという惨事が起きたのだ。
「公道にはみ出していますし、被災の負のシンボルになってしまっていますから、市はあのビルを早めに撤去した方がいいと考えているのですが……」
とは、さる輪島市関係者。
「そのめどが立っていません。当事者の方々の理解が得られていないからです」
どういうことか。
「所有者の五島屋の社長さんが撤去の申請を出していなかったんです。あれほど大規模に倒れたので、現在、国交省が原因などを究明するための調査に入っているところ。社長さんもなぜ自分のビルが倒れることになってしまったのか、納得しておらず、調査が終わるまではとの思いがあるようなのです」
それはビルに潰されてしまった居酒屋「わじまんま」の店主氏も同様だ。
「『わじまんま』さんは、あの敷地の所有者ではありませんが、借主ですので申請に関わる権利を持ちます。まだあそこには遺品が残っていることに加え、倒壊の原因を巡って、五島屋さんとの間でやり取りをしているそうで、撤去についての許可をもらえていない状況です」(同)
もっとも、最近になって、五島屋は申請を出したというが、こうした背景もあり、現状、市は静観せざるを得ないというわけなのだ。
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