「あっちに魅力がないんだからさ(笑)」不倫した妻の捨て台詞に傷つき“入院”。40歳夫が振り返る、2年半で終わった結婚生活
とつぜん退社した葉子さん
そんな彼を慰め、見守ってくれたのは両親や友人たちだった。彼は、両親が結婚してから12年たってようやくできた子だ。両親ともに40歳になっていた。大事に育てられたが、決して過干渉ではなかった。彼の気持ちを大事にしてくれたという思いがあった。
結婚するときは「あの人は、あなたには合わないんじゃないかなあ」と不安を口にしていた母親だったが、離婚してボロボロになっている彼に「早く退院して、何かおいしいものでも食べに行こう」と笑顔を向けた。見舞いに来た友人たちも深刻にならず、「何やってんだよ」「飲みに行こうぜ」と励ましてくれた。
「僕は本当に平凡な人間で、特に秀でた才能もない。でもこんな素敵な両親と友だちがいたんだというのを改めて感じました。今後は自分のためというより、誰かの役に立つ人間になりたいなんていう殊勝なことも思ったのを覚えています」
退院後は、仕事を中心に生活した。葉子さんとはフロアが違うので、めったに会わなかったが、たまにはばったり顔を合わせることもあった。「ノブさん、元気?」と言われると、無理して笑顔を見せた。そのくらいの意地は自分にもあったと彼は言う。
「本音を言えばつらかったです。ただ、離婚して1年ほどたったあるとき、葉子が会社を辞めたんです。連絡もなかった。葉子と同じ部署にいた同僚に聞くと、『彼女、略奪婚したわよ』って。驚きましたね。社内でもあっという間に噂が広まりました。相手は例のおっさんではなく、葉子は仲良くしていた同僚の夫と恋愛関係に陥った。その夫は別の会社に勤務していたそうですが、ついに奪って退職していった。周りを傷つけまくっても欲望に忠実に生きていく。それが彼女の生き方だったんでしょう」
何かが吹っ切れたような気がした。彼女は自分とは違う世界の人間だったのだと思うことができた。
***
ようやく回復の兆しを見せはじめた信史さんだったが……【後編】では、辛い目にあったはずの彼が、元妻と”同じ過ち“を犯すまでの過程とそのてん末を紹介している。
[3/3ページ]