父が実娘に5人の子を産ませ……「虎に翼」で注目 歴史的違憲判決を導いたおぞまし過ぎる栃木「実父殺害事件」とは

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夜のくるのが怖い

 地獄の始まりはA子が中学2年、三学期のころ。A子は父親に乱暴された。供述調書にこうある。

《当時の家は二間で、私が四畳半の間に一人で寝ているとき、隣に母と寝ていた父が、夜中に私の寝床に入り込み無理に乱暴されてしまい、それが始まりで母の目を盗んでは一週間に一度、十日に一度くらいの割で乱暴され続けたのでした》(以下、《》内、供述調書)

 7人きょうだいの2番目として生まれたA子は、長女が早くに死んだため、事実上の長女として扱われていた。父親は職業を転々としており、一時は農業に従事していたこともあったが、A子が中学2年の頃は宇都宮市で、食料品、雑貨類の店を持っていた。翌年、父親は事業に失敗。家族で引っ越しをする。そのときA子は初めて、母親に苦しみを打ち明ける。しかし母親は夫の異常なふるまいを知っても《「どうりで私のところにこなくなったからおかしいと思っていた」といったまま特に怒りの表情を見せていない》という。

 A子による母親への告白をきっかけに、夫婦の間で諍いが繰り返されるようになった。喧嘩が始まると刃物を持ち出す父から逃れるため、母と子供たちは幾度となく家を逃げ出す日々を送る。それでも父親は、A子への乱暴をやめることはなかった。そしてA子が16歳になったころ、父親は再び事業に失敗。母親は実家の兄を頼り、A子の弟たちを連れて北海道へと転居してしまった。A子は鬼畜となった父親と、妹たちと、宇都宮市内を転々としながら生活する。望んでいたわけでもないのに妹たちの母親代わりとなってしまったA子に、父親は乱暴を続けた。

《父は毎晩酒を飲みましたが、泥酔したときでも一日に二度、ほろ酔のときは三度と交渉を要求するほどでした。酒を飲んで荒れている日など、夜のくるのが怖いほどでした》

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