「夏の甲子園」で名勝負!プロで活躍する選手同士が演じた“忘れがたき因縁対決”

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 8月7日に開幕した夏の甲子園大会。報徳学園のエース・今朝丸裕喜、健大高崎の捕手・箱山遥人ら、プロ注目の逸材も多いが、過去の大会でも、現在プロで活躍する選手同士による“因縁の対決”が何度となく演じられている。【久保田龍雄/ライター】

1997年のヤクルト・石川雅規vsソフトバンク・和田毅

 現役最年長の44歳、ヤクルト・石川雅規とパ・リーグ最年長の43歳、ソフトバンク・和田毅が1回戦で対決したのは、1997年だった。

 秋田商のエース・石川は、秋田県大会決勝戦の前夜、合宿所のバルコニーでごろ寝しているときに、偶然飛行中のUFOを目撃し、「何かの吉兆では」と予感した。はたして、翌日の決勝では金足農に17対2で大勝。チームにとっても17年ぶりの甲子園は、「プロに入ったときよりうれしかった」という。

 エース・和田はじめ、2年生中心の浜田も、島根県大会準々決勝からの3試合をいずれも1点差で勝ち抜き、夏は16年ぶりの甲子園出場を決めた。

 大会4日目の第2試合、この時点ではまだ無名に近かった両左腕の対決は、7奪三振の石川に対し、和田も8回まで散発4安打1失点とほぼ互角ながら、5、8回にいずれも無死から三塁打で出た走者を確実にかえした浜田が3対1とリードして9回裏を迎えた。

 秋田商も最後の粘りを見せ、連打で無死一、二塁。次打者・佐々木雄志はセオリーどおり、三塁線に送りバントした。

 ダッシュして打球を処理した和田は、振り向きざま一塁に送球したが、勝利目前の緊張からか、ベースカバーに入った二塁手のグラブを大きくそれる大暴投になる。

 さらに右翼手の三塁送球も乱れ、ダブルエラーの間に2者が生還。佐々木も一挙三塁へ。悪夢のような同点劇に、和田は「頭が真っ白になった」という。

 一打サヨナラのピンチに、浜田は2人を敬遠し、満塁策をとったが、これが裏目に出る。敬遠の際に8球続けて「フワッと投げた」和田は、投球リズムを崩し、打者・石川に対し、ストレートの押し出し四球……。「打席で和田の苦しそうな表情がよく見えた。同じ投手として複雑な気持ちだった」という石川は、四球を選んだあとも、打席に立ち尽くしていたが、三塁走者の「走れ!」の声でようやく我に返り、一塁に走りだした。

 和田は「負けた悔しさよりも、僕は2年生だったので、こんな負け方をして、先輩たちに申し訳ないという気持ちでした」と雪辱を誓い、翌98年夏は8強入りをはたしている。

2013年の阪神・中野拓夢vs西武・高橋光成

 阪神・中野拓夢と西武のエース・高橋光成の甲子園対決が実現したのが、2013年。日大山形の2年生・中野は、2番セカンドとして初戦の日大三戦で2安打2打点を記録するなど、攻守にわたって山形県勢初の4強入りに貢献した。

 準決勝の相手は前橋育英。2年生右腕・高橋は、4試合で自責点ゼロと抜群の安定感を誇っていた。

 1回表。中野は初対決の高橋から中前にチーム初安打を放つ。さらに連打と四球で1死満塁とし、次打者も二塁方向に強烈な打球を放ったが、二塁手がショートバウンドで掴み、4-6-3の併殺に切って取る超美技。中野の先制ホームインは幻と消えた。

 好守で流れを引き寄せた前橋育英は、初回から3イニング連続得点で3対0と序盤で試合を決めた。前の試合で自打球を右膝に当て、「調子は良くなかった」という高橋も、6回に犠飛で1点を許したものの、被安打7の104球完投勝利で、チームを決勝戦に導いた。

 一方、中野は2打席目以降、三振、送りバント失敗の三ゴロ、三邪飛に打ち取られ、「2番打者として自分の仕事を完遂できなかった」と悔やんだが、守備では再三好プレーを見せた。

 4回にヒット性のゴロを踏ん張って一塁に正確に送球。7回無死二、三塁のピンチでも、一、二塁間を抜けそうな打球を横っ飛び好捕するなど、現在の“異次元の守備範囲”を彷彿とさせるプレーで、4試合連続無失策を記録している。

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