扇子をうっかり忘れた「5代目圓楽」が、高座で見せた“驚くべき対応力”とは
扇子を楽屋に忘れて高座に上がってしまった5代目圓楽さん
人気番組『笑点』で歌丸さんの前の司会者だった5代目三遊亭圓楽さんのある日の高座でのエピソード。私はこのときの高座を実際にテレビで見ていました。なんと圓楽さん、扇子を楽屋に忘れて高座に上がってしまったのです。扇子は、噺の最中にお箸になったり、手紙になったり、刀になったりという必須アイテム。そんな大事なものを忘れてしまったから、さあたいへん。
その日の演目は『芝浜』。飲んだくれの魚屋・勝五郎が奥さんに言われて早朝の芝浜にやってきたが、時間を間違えてまだ魚河岸が開いていない。時間つぶしに浜辺でのんびり煙管(きせる)をふかしていると、大金が入った財布を見つけて……という人情噺です。
圓楽さんにとってのピンチは、勝五郎がのんびりと煙管をふかす場面です。なにしろ煙管の代わりに口にくわえる扇子がない!
このとき、圓楽さんはどうしたか?
この場面が近づくと、落語家のもう1つの必須アイテムである手ぬぐいを手元でクルクルと巻き始め、いよいよ煙管をくわえる場面になると、棒状にした手ぬぐいを口にくわえて、ぷか~っと、扇子の代わり……いや、煙管の代わりにしてしまったのです。
こうして圓楽さんは、煙管というより葉巻にしか見えない「手巻きの手ぬぐい」でその場面を乗り切ると、最後まで無事に演目を終えたのでした。
何か大切なアイテムを忘れてきてしまったとき、正直に謝るのも、もちろん有効な対処
法です。でも場合によっては開き直って、「もともとそんなものなかったという体」でや
りきってしまうのも1つの手です。
ポイントは自信たっぷりにやること。そうすれば、相手はぜんぜん気がつかない……かもしれません。
(ポイント)自信たっぷりにやると、ミスは意外と気づかれない
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この記事の後編では、引き続き『一流は何を考えているのか』(Gakken)より、加山雄三の紅白での失敗エピソードから学べる「危機管理術」についてご紹介する。