「脂質を取らないと、痩せたはいいものの肌がボロボロに」 悪者扱いされる「あぶら」で長寿を目指す健康法とは

ドクター新潮 ライフ

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チャーハンを食べただけで1日の摂取量に

 とはいえ、もちろんただ闇雲に摂取すればいいというわけではありません。タンパク質(Protein)、脂質=脂肪(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)、それぞれの頭文字から取った摂取比率「PFCバランス」は、1日の総摂取カロリーのうちタンパク質(P)が13~20%、脂質(F)が20~30%、炭水化物(C)が50~65%という比率が理想的とされています。それぞれの栄養素をバランスよく取る必要があるわけです。

 これを重量に換算すると、50~69歳の男性であれば、活動量が低い人は1日47グラムで高い人は62グラム、同世代の女性であれば、やはり活動量が低い人は37グラム、高い人は49グラムの脂質摂取が推奨されています。

 なるほど、基準が決まっているなら簡単な話ではないか――。

 しかし残念ながら、実際はそう簡単な話ではありません。カレーライスには18.6グラム、ヘルシーに思える幕の内弁当でも19.7グラム、牛丼には25.4グラム、そしてチャーハンにはなんと34.9グラムもの脂質が含まれています(「日本食品標準成分表2010」などをもとに算出)。50~69歳の女性で活動量が低い人であれば、仮に昼食にチャーハンを食べたとすると、それだけで推奨される1日の脂質摂取量をほぼ満たしてしまうのです。

「見えないあぶら」

 あぶらには、自分で料理する時に使う「見えるあぶら」と、加工食品などに含まれている「見えないあぶら」の2種類があり、私たちの食生活では前者が20%、後者が80%を占めると考えられています。つまり、「見えないあぶら」が溢れている現代の食生活においては、知らず知らずのうちに脂質を取り過ぎてしまう危険性が高いのです。

 なるほど、ならば加工食品の栄養成分表示を見て、脂質の含有量に気を付ければいいのだから簡単な話ではないか――。

 しかし、やはり残念ながらそう簡単な話ではありません。まず、脂質の「脂」という漢字が、部首の「にくづき」に「旨い」というつくりで構成されていることから分かるように、脂質はうまい。つい食べ過ぎてしまいやすいのです。

 さらに、単純に脂質摂取量をPFCバランスに基づいた推奨量に合わせればいいという話でもないのが難しいところです。なぜなら、三大栄養素のバランスが大事であるのと同時に、「脂質の種類のバランス」も極めて重要だからです。とりわけ注意したいのが「必須脂肪酸」のバランスです。

 冒頭で脂質の成分である脂肪酸の話をしましたが、ともに多価不飽和脂肪酸である(3)オメガ6系脂肪酸と(4)オメガ3系脂肪酸は、(1)や(2)と違い、体内で作り出すことができないので食事から摂取するしかありません。そのため必須脂肪酸と呼ばれます。そしてこのオメガ3系脂肪酸とオメガ6系脂肪酸のバランスこそが、飽食の時代を生きる私たちにとってとても大切になってくるのです。

「オメガ3系が“良いあぶら”」という誤解

「魚介類やえごま油などのオメガ3系が“良いあぶら”である」

 食への意識が高い人の中には、このような話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。しかし、実はこの認識は必ずしも正確とはいえません。

 ともに必須脂肪酸であるオメガ3系とオメガ6系は「ライバル関係」にあります。ごく大雑把に言うと、オメガ3系は細胞膜を柔らかくし、オメガ6系は固くします。どちらに偏っても細胞膜は「膜」としての機能をうまく果たせなくなってしまうので、オメガ3系だけ取ればいいという話ではないのです。

 では、オメガ3系とオメガ6系のバランスをどうすればいいのか。厚生労働省はその摂取比率が「1対4」であることを目安としていました。国際的な脂質研究の学会では「1対2」が理想であると考えられていますが、いきなり実現するのはハードルが高いので、まずは1対4を目指すので構わないでしょう。

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