“これまで誰もできなかった”にこだわるが、“しょせん人気取り”と見透かされた 岸田首相が最後の望みをかけた憲法改正戦略
憲政史上初の国民投票にかけるなら
岸田文雄首相(自民党総裁)は8月14日に会見し、9月の自民党総裁選に出馬しないことを表明した。「新生・自民党」を打ち出すため自ら身を退くと述べたが、表明までには再選戦略を練り続けたとされ、改憲との絡みもその1つだった。首相は7日に自民党本部で開かれた憲法改正実現本部の会合に出席し、憲法への自衛隊の明記について言及したうえで、「憲政史上初の国民投票にかけるなら、ぜひ緊急事態条項とあわせて、自衛隊の明記も含めて国民に判断してもらうことが重要だ」と述べている。憲法改正自体は自民党の党是であり、悲願でもある。が、問題は、岸田首相の総裁選再選戦略と絡めて語られることが増えつつある点だ、という指摘もされていた。最後の望みをかけたその戦略を振り返る。
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「岸田首相が憲法改正実現本部の会合に出席したのは、憲法改正に前向きだということをアピールするには絶好の機会だったと思います。本人もそれを強く意識していたことでしょう」
と、政治部デスク。
「会合では、“国民の命や身体や自由を守るという国家の最も重要な責務を憲法にしっかりと明記することは緊急事態条項と共に大変重要な課題だ”“憲政史上初の国民投票にかけるなら、ぜひ緊急事態条項とあわせて、自衛隊の明記も含めて国民に判断してもらうことが重要だ”と話したとのことです」(同)
首相にとって芳しくないシナリオ
「これまで繰り出してきた政策がうまく行かず支持率が低空飛行を続ける中、首相が再選戦略に絡めて憲法改正に積極的に取り組む姿勢を見せようとしているというのは少し前から指摘されていたことです。本命不在の総裁選を仮に首相が勝ち抜いた場合、来年10月の衆院議員の任期切れまでに憲法改正のための国民投票を行おうとするのではないかとの見方もないわけではありません。かなり少数派ですが」(同)
9月の総裁選をめぐっては岸田首相が出馬するか否かを表明しない中で、さまざまなシナリオが取り沙汰されてきた。
「今年9月の総裁選の時点で衆院議員の任期切れまでまだ1年余あるので、そこで新しいトップを選んで解散総選挙をしなくても良いのではないか、ギリギリまで引っ張った後の方が良いのではないかといったムードがあったのは事実です。たとえば再選後にそのまま支持率が回復せず、来年7月の参院選で惨敗した責任を岸田首相に取ってもらって、新しい顔で解散に打って出るというシナリオですね、その場合、総選挙に与党は勝利して政権を維持できそうですが、一方で参院選に出馬する参院議員には“泣いてもらうしかない”などという言われ方をしていました」(同)
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