「“俺、墓がないんだよ”と呟いた元夫を納骨できた」「ペットと入れるお墓も」 コロナ後のお墓のトレンドとは

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コロナ明けから増加傾向

 厚生労働省の人口動態統計速報によると、23年の死者数は、過去最多の159万503人となった(外国人を含む)。納骨場所を移転させる改葬は、22年に15万1076件で、これも過去最多。

 墓を求めるのは、(1)身内が亡くなって新たに遺骨を手にした遺族、(2)元の墓を「墓じまい」し、遺骨を改葬したい遺族、(3)生前に自分(たち)用に用意しておきたい人、のいずれかだろう。

「緊急事態宣言が出て皆が外出を控えた時期、お墓の見学はぴたっと止まりました。3カ月後くらいから徐々に回復してきて、コロナ明けから、見学、購入とも増加傾向にあります」と、墓紹介サイト「いいお墓」を運営する鎌倉新書の広報担当、白井夢乃さんが言う。

 同社が、24年1月に実施した「第15回お墓の消費者全国実態調査」によると、23年1月~12月に「いいお墓」経由で墓を購入したアンケート回答者のうち樹木葬が48.7%、納骨堂が19.9%、一般墓が21.8%。樹木葬の多さが際立つが、この3形態の墓の購入者の64.1%が「跡継ぎ不要タイプ」を選んでいる。

「親父が亡くなり、郊外の霊園にある先祖代々の墓に納骨し、その墓の名義を私に変更しました」と、東京都三鷹市に住む横井吉男さん(67)は言う。近くに住む長男(32)が不動産関連事業を継いでおり、墓の次の継承者も長男であることを疑わない。だが、横井さんのような人はもはや少数派なのだ。

 跡継ぎ不要タイプを必要とするのは、子供がいない、子供が嫁いだ女の子ばかり、死者自身が単身者の場合――と想像しがちだが、100人に100の事情があるのが墓というものだ。

元夫の亡き後を引き取ろうという気持ちに

 渋谷区在住の坂上薫さん(67)は、03年に離婚して以来、元夫と会っていなかった。ところが、22年8月、元夫の上司から娘(44)宛てに「膀胱がんの末期 あなたに会いたがっている」と手紙が届き、娘が病院に行くのに付き添った。

 坂上さんは元夫に会うことにわだかまりはあったが、再会すると「一瞬で距離がなくなった」という。急激に病状が悪化していくなか、娘の希望を尊重して、亡き後を引き取ろうという気持ちになったそうだ。

「お墓はどうしよう。元夫は自分の実家のお墓を嫌がっていたし、私の実家のお墓では居心地が悪いだろうし……。ふと頭をよぎったのが、以前に本で読んだ築地本願寺の『合同墓』でした」

 築地本願寺は、浄土真宗本願寺派(西本願寺)直轄の有名寺院だ。17年、境内の一角に、礼拝堂を備えた「合同墓」が新設された。個人単位、継承者不要。過去の宗派不問。年間管理費不要。30万円~。「信頼できる大寺院に、私と娘が無理せず払える金額で納骨できる」と坂上さん。

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