「部下や仲間がどんどん死ぬので、悲しいという感覚がなくなっていた」…玉砕前の硫黄島で零戦パイロットが敢行した決死の爆撃

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栗林中将からの電報

 地上では、地獄絵さながらの壮絶な戦闘が展開されていたのである。一式陸攻も狙い撃ちされた。

「あっという間に米艦隊から高射砲が一斉に撃たれました。機の高度は3000メートルでしたが、物凄い音で砲弾が爆発し、弾が飛び散った。その弾は吸着爆弾で、磁石が含まれていて粉々になって機にぶつかり、カン、カン、パーン、パーンと凄い音がした。その度に機も左右に揺れ続けた。

 弾が当たらないように、機を揺らして蛇行させながら島に近づいて行くと、今度は機関銃の曳光が地上から空に向って輝くように伸びてきました。花火のようでしたが、その曳光の柱の数が凄かった。音は聞こえなかったけど、目の前で、光の壁のように周りを塞いでいるのです」

 同機は、その光の壁を突っ切って、12発の60キロ爆弾を投下した。木更津に無事、帰還すると、硫黄島守備隊総指揮官の栗林忠道中将から電報が届いていた。

「本日ノ爆撃ヲ深謝ス。(中略)我方士気極メテ上ガレリ。今後ノ続行ヲ期待ス」

 だが、2回目の爆撃に成功したのは3月25日。2万余の守備隊が全滅する前日のことだったのである。

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 第1回【ご飯がハエで真っ黒、大量の蚤、異様なガスの臭い…「硫黄島」で零戦パイロットが見た地獄】では、映画などでも知られる「硫黄島の戦い」の約半年前に出撃した零戦パイロットたちが振り返る、硫黄島の劣悪な環境と地獄の戦場について伝えている。

デイリー新潮編集部

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