大阪桐蔭が6年ぶりの「夏頂点」へ興南を撃破! 選抜の「エース」と「4番」が外れたが…それでも“強い理由”

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 8月8日に行われた夏の甲子園大会2日目。ともに「甲子園春夏連覇」の経験がある大阪桐蔭(大阪)と興南(沖縄)が激突した。大阪桐蔭の2年生右腕、中野大虎が、興南打線を4安打に抑えて、5-0で完封勝利を飾った。戦力的に大阪桐蔭が有利と見られていたが、試合前には“不安要素”があった。【西尾典文/野球ライター】

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下位打線の奮闘が光った

 エースの平嶋桂知(3年)が不調、今春の選抜で4番だった内野手のラマル・ギービン・ラタナヤケ(3年)が守備に不安があり、それぞれ先発メンバーから外れていたのだ。
 
 対する興南のエース、田崎颯士(3年)は、今大会屈指のサウスポー。大阪桐蔭は、2回まで1人の走者も出せず、甲子園の観客は「興南に勝機あり」と感じた方も少なくなかったのではないか。
 
 そんな“逆境”を跳ね返したのは、大阪桐蔭の下位打線だった。

 3回、7番の岡江伸英(3年)がライトへのヒットで出塁。続く打者がバントを失敗するも、9番の中野が四球を選び、上位打線に回した。1番の吉田翔輝(3年)が先制の2点タイムリースリーベースを放てば、宮本楽久(2年)がセンターへタイムリーヒット。3点先制に成功した。

 4回は、先頭バッターが倒れるも、6番の増田湧太(2年)、岡江が連続ヒット、さらに、8番の山路朝大(3年)がレフト前ヒット。ワンアウト満塁のチャンスで、中野が押し出しの四球を選ぶ。1番の吉田に再びチャンスが回り、セカンドゴロの間に1点を加えた。これで5対0。大阪桐蔭は、完全に試合の流れを掴んだ。

 クリーンアップの境亮陽、徳丸快晴、内山彰梧(いずれも3年)がノーヒットに終わるなか、主軸以外の選手で得点ができる。これが大阪桐蔭の“強み”だろう。

 打線の攻撃も見事だったが、やはり勝利の立役者は、冒頭で触れた中野だ。

 初回こそツーアウト一・二塁のピンチを招いたものの、5番の仲野大雅(3年)から三振を奪い、無失点で切り抜けると、2回以降は安定したピッチングを披露。球数はわずか103球。興南打線を4安打に封じる、見事な完封劇だった。

9回でも球威が落ちなかった中野投手

 ただ、中野は、この日のピッチングに満足していなかったようだ。

「自分のピッチングはできなかったんですけど、粘ることができたのは良かったと思います」(試合後のインタビュー)

 確かに、この日の最速は144キロ。自己最速の149キロには届かなかった。圧倒的なスピードがあったわけではないが、それでも相手打線を最後まで0に抑えた。これは成長の証と言えそうだ。

 大阪桐蔭の西谷浩一監督は、中野の先発起用について、以下のように説明している。

「(中野は)何より気持ちが強い子ですし、試合を作れますし、フィールディングも上手い。他のピッチャーも状態は良かったので、(誰を先発させるか)悩みましたけど、中野がよいかなと思って、決めました」

 そして、完封劇については……。

「完封は、ちょっと出来すぎですね。5回、6回くらいで交代も考えましたけど、(中野が)チラチラとこちら(ベンチ)を見て『代えるなよ』という顔をしていました(笑)。7回、8回に少しボールの力が落ちたかなと思ったら、(中野が)『相手を見ながら投げているので、全然、へばっていません。9回、見といてください』と言って、本当にガーンと強いボールを投げていたので、余力はあったと思います」

 さらに、こう続けた。

「1年生の頃は、インコースに真っすぐを投げるのが『男のピッチングだ』みたいな感じで、よく打たれていたので、そうじゃないよと(指導しました)。特に、冬の間はピッチングコーチに話して、『落ちるボール』をしっかり練習してほしいと伝えました。変化球に対する欲(変化球を磨く意欲)も出てきたかなと思います」

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