NHK内部が激変し、劇的にドラマが面白くなった「最大の理由」…前会長時代は月に20人以上のペースで職員が辞めていった

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腹が据わっている

 NHK連続テレビ小説「虎に翼」が好評なのは知られている通り。同局「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(火曜午後10時)も評判高い。この放送枠の前作「燕は戻ってこない」も話題になった。今、ドラマ界はNHKを中心にまわっていると言っても過言ではないくらい。同局で何が起きているのか。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

「虎に翼」は佐田寅子(伊藤沙莉)を主人公とするリーガルドラマ。ほとんどのリーガルドラマは現実と懸け離れているため、法曹関係者は冷ややかに観るものだが、この作品は違う。

 元東京高裁部総括判事の弁護士・木谷明氏(86)は筆者の取材に対し、作品のリアリティに太鼓判を押し、内容についても「素晴らしい」と絶賛した。リーガルドラマが現実から逸れるのは、そうしないと面白くならないからだが、「虎に翼」は事実に沿っていても面白い。

 思想家で神戸女学院大名誉教授の内田樹氏はこの作品の腹の括り方を評価する。7月30日放送第87回で、関東大震災後に起きた朝鮮人虐殺に触れると、同日のX(旧ツイッター)に「日本社会の朝鮮人差別を正面から描くという製作陣の覚悟を感じる」と投稿した。

 多くの研究者が事実と認定し、東京都が出版した『東京100年史』(1972年)にも記載があるが、小池百合子・東京都知事(72)が歴代知事の続けてきた犠牲者追悼式への追悼文送付を止めた。このため、事なきを得ようとする制作者なら触れないだろう。

 民放は「虎に翼」の放送自体が無理に違いない。民放が避けて通りがちな男女差別や民族差別の問題に奥深く踏み込んでいるからである。この作品の人気の一因は「民放では観られない内容」だからではないか。

 河合優実(23)が主演している「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」も評判が高い。約1年前にBSプレミアムで放送された作品が地上波に移行されたもので、BS放送時はギャラクシー賞奨励賞やATP賞テレビグランプリのドラマ部門奨励賞などを得た。

 新しいタイプのホームドラマで、河合は兵庫県神戸市の高校3年生・岸本七実に扮している。地頭が良くて明るく、ユーモアのセンスが抜群の女性だ。

 七実の父親・耕助(錦戸亮)は5年前に急性心筋梗塞で他界した。母親・ひとみ(坂井真紀)は整体院で働き、七実とその弟・草太(吉田葵)との生活を支えている。朗らかな女性だ。中学2年生の草太も明るい性格であるものの、ダウン症であり、やっと1人でバスに乗れるようになったばかりだった。

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