埼玉県さいたま市が「さいコイン」導入 デジタル地域通貨の“300億円流出”問題を防げるか
市民のお金が市内で回る仕組み
独自のデジタル通貨を発行して市内で使ってもらえれば、手数料としての流出も、市外での消費も解消できる――。
改めてさいたま市に聞いた。
「特典を付けることで利用者は日常の買い物がお得になるメリットがあり、また、市内の店舗等の事業者には、初期費用不要で、他のキャッシュレス決済より手数料を低く、1.8%にすることで負担を軽減します。これにより、市民が市内の店舗でさいコインを使うという、市民のお金が市内で回る仕組みを作り、地域が活性化することを目指します。また中長期的には、手数料収入を何らかの形で還元することを考えています」(地域活性化推進室、以下同)
もちろん、キャッシュレス決済事業は競合する事業者に勝たなければ普及しない。そこで、さいたま市は利用者に付与する特典を大きくした。
1つは、初回に限り、1万円以上をチャージすれば2000ポイントが付与されること。予算は4億円であり、先着20万人が恩恵を得られる。またその後は、チャージ金額に対して3%のポイントが付与される。(1ポイント=1円で使用できる)
「ポイント付与に加え、図書館の利用、各種の手続きなど行政サービスを受けることができるのも特典です。今後は、地域のボランティア活動に参加すればポイントを付与するなど、サービスをより充実させて行きたいと考えています」
赤字になった際はその時に検討
ちなみに事業主体は地域商社だが、初回の2000ポイントの付与も、その後の3%のポイント付与も、ポイントの原資はさいたま市が負担する。そのために今年度、11億4800万円の予算を計上した。
ポイント付与率3%は今年度まで。来年度以降は、状況を見ながら、確保できる予算によるという。ただ、これは地域商社の事業である。赤字に転落した時はどうするのか?
「さいたま市は、あくまでも出資者の1人で(20%出資の筆頭株主)、赤字への補填等の決め事はありません。赤字になった際は、その時に検討することになります」
さいたま市は今年度の目標として、5000店の加盟(初日時点で1041店)、利用者20万人、取扱高58億円を目指している。
さいたま市がデジタル地域通貨発行を検討したのは、全国の自治体でいくつか先行例がある上に、近隣の深谷市が19年度に地域通貨「ネギー」を導入したこともある。だが、人口が50万人を超える、全国に20ある政令指定都市の中では初めての試み。市民に広く普及すれば、“マネー”のあり方を変えるのかもしれない。