ウルトラマン“フジ隊員”の華麗なる変身 寂聴さん推薦で芸能界へ、「Q」の衣装は自前…15年間の休業を経た現在は

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 現在まで脈々と続く特撮作品「ウルトラマン」シリーズ。その礎となった1966年の「ウルトラQ」「ウルトラマン」にヒロイン役で出演した俳優、桜井浩子さん(78)が、両作品全67話を振り返った、青山通さんとの共著作『「ウルトラQ」「ウルトラマン」全67作撮影秘話 ヒロインの記憶』を上梓した。桜井さんは現在、両作品を制作した円谷プロダクションでコーディネーターも務めており、その経験が今回の著作に大きく役立ったという。

寂聴さんがいなければ…

 桜井さんは「ウルトラQ」で毎日新報のカメラマン兼記者の江戸川由利子役、「ウルトラマン」では科学特捜隊の紅一点、フジ・アキコ役を演じた。女優となった原点は、小学校3年時に少女雑誌「なかよし」の写真小説「ひとみちゃん」のモデルに応募し、主役に選ばれたこと。決め手となったのは、原作者の強力な推薦だ。原作者の三谷晴美さんがのちの瀬戸内寂聴さんだったことは、知る人ぞ知る話である。

「もともと女優かバレリーナ、バスガイドになりたいと思っていましたが、バレエは才能が問われるし、バスの発車オーライの合図ならできそうだけど、全部やれるのは女優なのかなって。寂聴さんに選ばれなかったら、今の私はいないですね」

 1961年に「東宝オールニュータレント」の第一期生として東宝に入社。ただ、3年間の新人契約が切れかかる頃には、映画産業が斜陽化の時代を迎えていた。

「東宝の中もザワザワ感があった時代でした。その頃に、よく分からない面接があって。所長に呼ばれて2度の面接を受けたあと、円谷プロに行かされたんです」

 円谷プロで制作が進んでいたのは「ウルトラQ」。すでに万城目淳役として、東宝のスター、佐原健二の出演が決まっていた。レギュラーのもう一人、戸川一平役の西條康彦は後から出演が決定。スターである佐原が現場でもリーダー的存在となり、スタッフらとともに率先して撮影機材を運ぶなどした。そうした現場にいた人だからこそ知る事実が、今回の著書には並んでいる。

「巨大フジ隊員」に対する思いも

 桜井さんはといえば、その時の衣装合わせに「ジーパンを穿いて、木綿のワイシャツにすっぴんで行きました」という。映画本編であれば良い意味で“いじくり回される”はずなのに、当時はまだテレビの仕事が「電気紙芝居」とも揶揄されていた時代。映画本編より低い地位にも見られていた仕事では、「着の身着のまま」の自前の衣装で出演することも多かった。

 自前だけにその時の衣装の記憶は強く脳裏に刻まれており、モノクロ作品だった「ウルトラQ」をカラーライズして「総天然色 ウルトラQ」のDVD、Blu-rayとして2011~12年に発売する際、大いに役立った。

 今回の著書には「ウルトラマン」を振り返る箇所もある。例えば「シン・ウルトラマン」(2022年)で浅見弘子(長澤まさみ)が巨大化したことを受け、改めて注目された「巨大フジ隊員」に対する思いなどが当時の思い出を交えて綴られている。

 両作品で関係を得た、バルタン星人の生みの親でもある飯島敏宏監督、魚眼レンズで桜井さんの顔を撮影し怒らせたという実相寺昭雄監督、カネゴンなどの名物怪獣を演出した中川晴之助監督などのエピソードも語られている。

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