「卵忘れたから待ってて!」、カゴへの入れ方にクレームも…「スーパーのレジ係」が明かす理不尽カスハラの実態 「レジ係が椅子に座るとお客さまから批判されそう」

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レジ係たちの隠れた配慮

 牛乳パックや大きいペットボトルなどをレジ係がスキャンし、カゴに移し替える時、こんなことを聞かれたことはないだろうか。

「倒してお入れしてもいいですか?」

 実はこの言葉には、レジ係の客に対する「ある配慮」が隠されている。客は袋詰めする際、牛乳パックなどの重たく堅いものを先に入れたいのが常。なので、牛乳パックは立っていたほうが取り出しやすいのだ。

 レジ係が会計時に倒して入れておくと、客が袋詰めする際、わざわざ軽い商品をかき分け、カゴの底から牛乳パックを取り出さないといけなくなる。

 だが、レジ係としては、それらを立てておくとカゴのバランスが悪くなったり、サッカー台まで持って行く時に倒れたりする可能性があるため、あらかじめ倒して入れたほうがいいと思った際に、先のような質問を客にすることがあるのだ。

 こうした配慮をするレジ係が現れたのも、カゴへの入れ方に対するクレームが多いことに起因する。実際、SNSでも客からレジ係に対して「カゴへの移し替え」に関する要望が散見される。

「スーパーでレジ係が完璧にカゴに収めてくださるのだが、それが非常に袋詰めしにくい。重いものが下、柔らかいものが上になっているため、全部出してから袋に入れ替えることになる。重いものと柔らかいものでカゴを分けてほしい」

 こうした両者の「入れ方論争」は以前から生じていたのだが、昨今、この論争を一気に集結させるアイテムが普及し始めている。

「マイカゴ」だ。

 2020年7月1日からレジ袋の有料化によって、現在は半数以上の企業でレジ袋辞退率が80%以上に。平均辞退率は77.0%。地方圏では都市圏に比べ平均辞退率がやや高くなっている。

 そんなレジ袋の有料化によって、「マイカゴ」は「マイバッグ」と同様、一気に普及した。

 レジのカゴと同じカタチをしたカゴを持参し、会計後の商品を受けるカゴにすれば、客が自らサッカー台で荷物を袋詰めする必要がなくなる。客としては時短はもちろん、熟練の技を有するレジ係が入れてくれた状態のまま持って帰ることができる。

「マイカゴに詰める時とお客さんが詰める時の配置を変えています。そのまま持って帰っていただくことになるので若干気は遣いますが、レジ係としてもお客さまの袋詰めのことまで気にせず入れられるのでいいです」

コロナ禍のレジ係

「レジ係あるある」としてよく聞かれるのが、客それぞれのカゴの中身をみることで、食事や生活スタイルが垣間見られる、とする声だ。

「カレー粉と一緒にジャガイモ、肉、ニンジンが入っているのに玉ねぎが入っていない時は、声を掛けようか迷いました」

 しかし、そんなカゴの中身の観察も、ある時期は緊張したという。コロナ禍だ。

「おかゆやスポーツドリンク、ゼリー飲料ばかりをカゴに入れていたお客さまに初めて対応した時は、正直怖かった。本人かその周辺に感染者がいると察した」

 コロナ禍では、レジ係も客もマスク着用のうえ、両者の間には透明フィルムが貼られた。その当時は聴き返しや言い直しが絶えず、「何を言っているか分からない」というクレームも増えたという。

 なかでも外国人にとっては辛い時期だったとの声も。

「聞き取れないことを外国人特有のアクセントのせいにされ、『だから外国人は仕事ができないんだ。日本人のレジ係を呼べ』といわれた外国人店員もいました」

 このコロナ禍で大きく普及したのが、スキャンから会計まで客が行う「セルフレジ」、そして会計のみ客が行う「セミセルフレジ」だ。若者などからは「対面が苦手なのでセルフレジありがたい」との声がある一方、買い物弱者になりやすい高齢者にとっては悩みのタネにもなっている。

「うちのスーパーも数年前、人手不足でセルフレジ・ミニセルフレジを導入したんですが、客に高齢客が多く使い方がなかなか定着せず。お客様補助や説明に人員が取られ、本末転倒の状態になっています。お年寄りにとってはあの細い投入口にお札を入れるのも至難の業だったりしますから」

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