世界が注目するブラック・アーティストが20年間も訪日を続ける理由 日本初の個展に見える「その地が持つ文化への敬意」

ライフ

  • ブックマーク

自分と一緒に夢を見てくれる人を探す

 最後にもう一つ、展示を作るにあたって、ゲイツとたくさんの言葉のやり取りがあったかと思いますが、その中で印象に残った言葉はなんでしょうか?

「シアスターは大型の建築プロジェクトとか、膨大な数の貧乏徳利だとかのスケールの大きな作品を作っています。自分以外の力が必要になります。その時に人に何かをお願いするのではなくて、自分と一緒に夢を見てくれる人を探すようにしている、と言うんですね。だから人を見るときに、ただ『この人はお金を持っている』とか『技術を提供できる』ということではなくて、お金がなくても技術がなくても一緒にやりたい、シアスターが夢見ている途方もない物語を一緒に描こうとしてくれる人を見極めるようにしている。そんなことを言っていたのが印象的です」

 ゲイツと柳宗悦は、同じ夢を見ている。

 その土地その土地からにじみ出てきた文化に敬意を持つ。この姿を夢見ることが、アフロであり、民藝なのだ。

 ***

 第1回【「アフロ」と「民藝」はなぜ繋がったのか…日本初のシアスター・ゲイツ個展に見える「敬意」と「自由」】では、「アフロ芸術」展示内容の詳細を紹介している。

シアスター・ゲイツ
1973年、米国イリノイ州シカゴ生まれ、同地在住。アイオワ州立大学と南アフリカのケープタウン大学で都市デザイン、陶芸、宗教学、視覚芸術を学ぶ。土という素材、客体性(鑑賞者との関係性)、空間と物質性などの視覚芸術理論を用いて、ブラックネス(黒人であること)の複雑さを巧みに表現している。2004年、愛知県常滑市「とこなめ国際やきものホームステイ」(IWCAT)への参加を機に、現在まで20年にわたり常滑市の陶磁器の文化的価値と伝統に敬意と強い関心を持ち、陶芸家や地域の人々と関係を築いてきた。

土居彩子(どい・さいこ)
1971年富山県生まれ。多摩美術大学芸術学科卒業。棟方志功記念館「愛染苑」管理人、南砺市立福光美術館学芸員を経て、現在フリーのアートディレクター。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。