サウジ「ドラゴンボール」、中国「ウルトラマン」… 世界ですすむ“超巨大テーマパーク”で日本はどれだけ稼げるか

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中国で広がる「ウルトラマン」人気

 その一つが「ウルトラマン」だ。22年に遊技機大手フィールズは、子会社の「円谷プロダクション」を統合することで円谷フィールズホールディングスに社名変更。特撮番組「ウルトラマン」の世界的な人気によって、円谷プロダクションが急成長していることが背景にある。

 なかでも中国でのウルトラマン人気は目を見張るものがあり、その原動力の一つが、ウルトラマン・テーマパークの導入だ。23年に大連と成都にある巨大テーマパークに“ウルトラマン・エリア”が相次いで誕生。中国では今後も、他の都市で同様の展開が見込まれており、ウルトラマン人気はまだ広がる可能性がある。

 世界的に「巨大市場」としての成長が期待されるキャラクター・テーマパークだが、“本家”日本での動きはこれまで鈍かった。その理由に挙げられるのが、巨額の初期投資と複雑な権利関係とされる。

 正確には日本でもバブル期に“テーマパーク・ブーム”が一度起きたが、この時は「伊勢志摩スペイン村」や「ハウステンボス」など、海外の人気観光地を再現したものが主流だった。当時、数多くの施設が建設された一方で、閉園に至ったところも多く「死屍累々」と評されたこともあった。巨額の先行投資の必要性だけでなく、「リスクが大きい」との認識も共有されるようになったのだ。

いよいよ日本でも…

 ところが22年から、愛知県の愛・地球博記念公園内にスタジオジブリパークが順次オープンしたことで、“様子見”を決め込んできた国内の状況に変化が訪れる。事業主体の愛知県などの投資金額は約500億円にのぼったが、ジブリパーク開園後、愛・地球博記念公園の来場者数は22年時点で従来の3倍になり、最終エリア(魔女の谷)が開園した今年はさらに増えると予想。「大成功」といっていい結果を収めているのだ。

 また今年4月、三井不動産を代表とする企業連合が落札した築地再開発事業は「都内最大級」の大規模プロジェクトとして話題を集めるが、対抗案として競ったのは、アニメやゲームを中心とした巨大エンターテイメント施設の事業計画だった。

 さらに2027年に横浜で開催される国際園芸博覧会(花博)の会場跡地について、三菱地所が複合商業施設のほか、大型テーマパークを整備することを発表しているが、構想のなかにアニメやゲームをテーマとする案も浮上しているという。国内でも徐々にアニメなどのコンテンツを軸に据えたテーマパーク事業への大型投資が現実味を帯び始めているのだ。

 現在、日本を訪れる海外のアニメやマンガファンは、来日しても直接“推し”の作品に触れる場所がないと嘆く。しかし日本でもアニメ・テーマパークができれば、こうした不満は解消され、インバウンド消費の伸びも期待される。そして重要なのが、ライセンス料の発生によって、アニメの製作者やクリエイターにも“恩恵”が行きわたる好循環が生まれる点だ。巨大テーマパーク事業は、日本のアニメビジネスのさらなる成長を後押しする「最後のフロンティア」といえるだろう。

数土直志(すど・ただし)
ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。アニメーションを中心に国内外のエンターテインメント産業に関する取材・報道・執筆を行う。大手証券会社を経て、2002年にアニメーションの最新情報を届けるウェブサイト「アニメ!アニメ!」を設立。また2009年にはアニメーションビジネス情報の「アニメ!アニメ!ビズ」を立ち上げ、編集長を務める。2012年、運営サイトを(株)イードに譲渡。2016年7月に「アニメ!アニメ!」を離れ、独立。

デイリー新潮編集部

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