「五輪採用でブレイキンのレベルは驚くほど上がってます!」シゲキックス(Shigekix)の姉・半井彩弥が語る“商社に勤務”しながらパリを目指した日々【全2回のうち第2回】

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五輪種目の採用とともに生まれた葛藤

 パリ五輪における「ブレイキン」は、選手同士の1対1のバトル形式で行われ、DJの音楽に合わせて披露された踊りを、9人の審判が「技術性」「多様性」「完成度」「独創性」「音楽性」で評価する。

 彩弥選手は「これまで先輩方が積み上げてきたものが、多くの人に目を向けていただけるようになったことへの感謝の気持ちが大きい」と五輪種目として行われる競技への思いを語るが、採用が決まった当初は、磨き上げた個性を競い合う競技の特性などからさまざまな戸惑いがあったという。

「最近は勝つために踊ることより、自分のダンスを通して何か伝えられたらなという思いの方が強い。私の踊りを見て、自分を表現することの素晴らしさを感じてくれたら嬉しいです」

 今年2月に行われた全日本選手権(NHKホール)で2位になった半井彩弥選手は、試合後の会見でこのように語った。

「ブレイキンの選手が五輪に出られることが決まってから、私の『絶対に五輪の舞台に立ちたい』という思いは日に日に強くなっていきました。五輪に出場するにはもちろん試合に勝つ必要があるんですけど、なかなか自分のダンスを評価してもらえないことがあって。試合後に『どうすれば勝てるダンスが出来るのか?』を必死に考えてみるんですけど、まずは自分らしく戦えないと選手としての強さにも繋がりませんし、もし仮に普段やらないような動きで勝てたとしても、まったく達成感がない。勝つための絶対的な方法がない中で、自分のダンスと向き合わなければならない日々が辛くて、時に気持ちが入らないようなこともありました」

 自分のダンスに対してネガティブになってしまう気持ちや、別のスタイルで得点を伸ばしていく他のB-GIRLを傍目に眺めながら思い悩む彩弥選手が導き出した答えは、“自身のダンスを突き詰めること”だったという。

「ある時にみんなが違う勝ち方をしているからこそ、自分のダンススタイルに磨きをかけていけばいいと気付かされて。好きな動きにオリジナリティを加えたりして、自分のダンスを最大限に見せることに集中できるようになりました」

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