「今日は円谷君のために走ろう」…メキシコ五輪・マラソン銀メダリスト「君原健二さん」が明かした「あの日、なぜ後ろを振り返ったか」
「トレス!」「ドス!」
「すぐ後ろに黒いシャツ!」
レース終盤、35キロを過ぎた勝負どころで、沿道から大きな叫び声が聞こえてきた。1968年10月20日、メキシコシティオリンピックのフィナーレを飾るマラソン。君原健二が耳にしたのは、同じ八幡製鉄に勤め3000メートル障害に出場していた後輩選手の興奮した大声だった。【飯田守/ライター、編集者】
(全2回の第1回)
その時、君原は、藻掻き苦しんでいた。会場となったメキシコシティの標高2200メートルの薄い酸素との戦いだけでなく、25キロ過ぎから催してきた便意と、さらには下腹部を突き上げてくる痛み。...